こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「ロサンゼルスは昼だ」
「日曜でしょ」
 騙されないと遥が答えると隼人は「日曜だったか」と笑った。
 絶対知っていたくせに。

「朝食を食べてから寝るか?」
「んー。あと少し。サーバーのバックアップを取ってから寝るわ」
 遥はバックアップソフトを起動しながら隼人に答える。
 
「自動じゃないのか?」
「社内のサーバーから社内の別のパソコンには毎日自動でバックアップを取っているけれど、それとは別にクラウドに保存しているの」
 システムバックアップとデータバックアップの両方を長期連休の間にやっていると話しながら、遥はバックアップ開始ボタンを押した。

「HCSC?」
「え? どうして知って……待って。Hから始まる会社って」
「Hayato Cloud Save Corporationだ」
 くくっと笑いを堪えている隼人の顔を見るのがなんだか悔しい。

「世の中の会社すべてが、あなたの物じゃないかと不安になるわ」
「それはどうも」
 隼人は慣れた手つきでコーヒーの準備を始める。
 ゴリゴリと豆を挽く音を聞きながら、遥はぼんやりとバックアップの進捗を眺めた。
 1%、2%と少しずつ進んでいく棒グラフ。
 いい匂いのコーヒーを差し出されても、進捗はまだ12%だった。

「ツクモは格安だぞ」
 容量に応じて金額が高くなるが、実はツクモだけ固定料金なのだと隼人はブラックコーヒーを飲みながら遥に教える。

「どうして?」
「まだ世の中にクラウドが広まっていないときに、優作さんが応援してくれたからだ」
「……お父さんが?」
 お父さんとの接点はココ!?
 
「誰もがそんな実態がわからない物はやめろと言ったが、優作さんだけはやってみればいいと後押ししてくれた」
「お父さん、言いそう」
 まさか隼人とお父さんの思い出を語る日が来るなんて思いもしなかった。
 社員たちは私に気を遣って父のことは言わないし、取引先は断る理由に父を出すが、それ以外で話してくれるのは白河だけ。
 親戚とは絶縁状態だし、もう誰とも父のことを話すことはないと思っていたのに。

「……悪い」
 コーヒーを静かにテーブルに置いた隼人は、泣かせるつもりはなかったと遥を抱き寄せる。
 
 これはきっと徹夜のせい。
 徹夜明けのハイテンションで感情がコントロールできないだけ。
 この腕の中が安心できるなんて勘違いだ。
 遥は止まらない涙を隠せないまま、隼人の胸に顔を埋めた。
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