こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
隼人が開けた鍋もコンロも何もないキッチンは、この家の開かずの間。
料理中に倒れて亡くなった母を幼い私が思い出さずにすむように、父が物理的に見えなくした場所だ。
隼人に教えるつもりはないけれど。
「そろそろ帰るか?」
「あっ! もう19時!」
遥が雨戸を閉めようとすると、隼人が代わりにやると申し出る。
だが、建付けの悪い雨戸はなかなか隼人のいうことを聞かなかった。
「これはね、ちょっと浮かせて……」
遥が少しだけ持ち上げるようにしながら雨戸を横にスライドさせると、あっさり閉まる。
「さすが住人だ」
「庶民で悪かったわね」
隼人は雨戸をスライドさせながら上や下をのぞき込むと、玄関の片隅に置いていた工具箱からドライバーを手にして戻ってくる。
雨戸を動かしながら調整ビスをクルクルっと回すと、「このくらいか?」と呟いた。
「どうだ?」
あんなに建付けが悪かったのに、スムーズに動くようになってしまった雨戸。
嬉しいけれど、なんだか悔しい。
「戸車の部品交換はした方がいいと思うが、とりあえず応急処置だな」
「私の今までの頑張りはなんなのよ」
この男にできないことはないの?
なんだか自分がとんでもなく要領が悪いのではないかと思えてくる。
「分解も好きで、よく怒られた」
戻せなくなった家電の個数は数えたくないと隼人は肩をすくめた。
「そんなにやんちゃだったの?」
「できないと悔しかったな」
子どもの頃から完璧人間だったってことね。
でもこの人らしいかもしれない。
私は分解する勇気なんてなかったから、正反対だわ。
実家の鍵を閉め、駅の横の駐車場まで二人で歩く。
長袖服を詰めたボストンバッグは隼人が持ってくれた。
「スーツケースひとつで足りるって啖呵を切りながら引っ越してきたくせに」
「足りるわよ! でも捨てるのはもったいないかなと」
本当は荷造りの時間がなく、夏服しか持って行かなかっただけだ。
秋になったら会社帰りにここへ寄って、持って行けばいいと思っていたとは言えない。
隼人の車に乗り、マンションへ向かうと思ったのに道が違う気がする。
「あ、花火……?」
すっかり忘れていた!
建物の隙間であまりよく見えないが、ピンクや白の花火がチラ見する。
車はなぜか脇道に入り、坂を上って行くみたいだ。
だんだん見やすくなった花火を遥は助手席の窓から眺めた。
「わ! スターマイン!」
大きな音と共に光り輝く花火が美しい。
シュッと上がる白い線がそのあとの大きな花火を期待させ、色鮮やかな花が空に咲き、消えていく。
「キレイ」
車はいつの間にか丘の上の公園へ。
建物に邪魔をされずに花火が見られるスポットなのに、穴場なのか数人のカップルしかいなかった。
料理中に倒れて亡くなった母を幼い私が思い出さずにすむように、父が物理的に見えなくした場所だ。
隼人に教えるつもりはないけれど。
「そろそろ帰るか?」
「あっ! もう19時!」
遥が雨戸を閉めようとすると、隼人が代わりにやると申し出る。
だが、建付けの悪い雨戸はなかなか隼人のいうことを聞かなかった。
「これはね、ちょっと浮かせて……」
遥が少しだけ持ち上げるようにしながら雨戸を横にスライドさせると、あっさり閉まる。
「さすが住人だ」
「庶民で悪かったわね」
隼人は雨戸をスライドさせながら上や下をのぞき込むと、玄関の片隅に置いていた工具箱からドライバーを手にして戻ってくる。
雨戸を動かしながら調整ビスをクルクルっと回すと、「このくらいか?」と呟いた。
「どうだ?」
あんなに建付けが悪かったのに、スムーズに動くようになってしまった雨戸。
嬉しいけれど、なんだか悔しい。
「戸車の部品交換はした方がいいと思うが、とりあえず応急処置だな」
「私の今までの頑張りはなんなのよ」
この男にできないことはないの?
なんだか自分がとんでもなく要領が悪いのではないかと思えてくる。
「分解も好きで、よく怒られた」
戻せなくなった家電の個数は数えたくないと隼人は肩をすくめた。
「そんなにやんちゃだったの?」
「できないと悔しかったな」
子どもの頃から完璧人間だったってことね。
でもこの人らしいかもしれない。
私は分解する勇気なんてなかったから、正反対だわ。
実家の鍵を閉め、駅の横の駐車場まで二人で歩く。
長袖服を詰めたボストンバッグは隼人が持ってくれた。
「スーツケースひとつで足りるって啖呵を切りながら引っ越してきたくせに」
「足りるわよ! でも捨てるのはもったいないかなと」
本当は荷造りの時間がなく、夏服しか持って行かなかっただけだ。
秋になったら会社帰りにここへ寄って、持って行けばいいと思っていたとは言えない。
隼人の車に乗り、マンションへ向かうと思ったのに道が違う気がする。
「あ、花火……?」
すっかり忘れていた!
建物の隙間であまりよく見えないが、ピンクや白の花火がチラ見する。
車はなぜか脇道に入り、坂を上って行くみたいだ。
だんだん見やすくなった花火を遥は助手席の窓から眺めた。
「わ! スターマイン!」
大きな音と共に光り輝く花火が美しい。
シュッと上がる白い線がそのあとの大きな花火を期待させ、色鮮やかな花が空に咲き、消えていく。
「キレイ」
車はいつの間にか丘の上の公園へ。
建物に邪魔をされずに花火が見られるスポットなのに、穴場なのか数人のカップルしかいなかった。