こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「うちからも見えるけどな」
 かなり遠いけれど隼人は付け加える。
 
 さすがセレブ。
 建物が高すぎて遠くまで見えるのは知っていたけれど、花火まで見えるなんて。

「だが音が聞こえる方がいいだろう」
「花火は近くで見ると火薬が飛んでくるのよ」
 坊ちゃんだから知らないでしょと遥が揶揄うと、「ビール片手に見ていそうだ」と反撃を食らう。

 なんでバレたのよ。
 去年は屋台でイカ焼きとビールを買ったわよ。

「花火は江戸時代に慰霊をこめてはじまったらしい」
「だから今日なのね」
 ……あれ? 待って。
 今日、花火大会よね?
 
「ねぇ、ディナークルーズは?」
「クルーズには慰霊の意味はないと思うが?」
 何か意味があったか調べようとスマホを取り出す隼人の手を遥は止めた。

「お嬢様とディナークルーズの約束をしていたんじゃないの?」
「お嬢様?」
 なんの話だと聞き返された遥は目を見開いた。

「伊集院製薬のお嬢様とディナークルーズから花火を見る約束を……あ、違う。お小遣いが減らされてお金が払えない? あれ? どういうこと?」
「なんの話だ?」
 この反応を見る限り、とぼけているわけではなさそうだ。
 遥は先日会社に押しかけて来たお嬢様の動画を隼人に見せた。

「なんですぐ言わなかった?」
「あー、まぁ被害もなかったし?」
 隼人は遥のスマートフォンから勝手に動画を転送する。

「次からはちゃんと言え」
「あ、えっとこないだのネイルサロンも」
 なんでそんな怖い顔してるのよ。
 別に隼人のせいだなんて言っていないじゃない。
 まぁ、ワインの瓶は落として粉々にしたけれど。

「あの日、様子がおかしかったのは……」
「おかしくなんてないわよ」
「いや、ディナークルーズの話をしたら急に不機嫌になったのは嫉妬か」
 そうかそうかと嬉しそうな顔しないでよ!
 なんでそんなことまで覚えているのよ!

 空には綺麗な花火。
 周りはカップルだらけ。
 だから雰囲気に飲まれたと言ってしまえばそれまでかもしれない。

 隼人の手が遥の頭の後ろに回り込んだと思った瞬間、顔は強制的に上を向かされる。
 二人の身長差は20センチ。
 隼人の整った顔が近すぎる!

 飛び出しそうな心臓を気遣う暇もなく塞がれた唇に、遥はゆっくりと目を閉じた。
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