こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜

18.火事

 これはマズい。
 花火の雰囲気に飲まれたから。
 父の供養をしにきてくれたから。
 お嬢様とディナークルーズに行かないと聞いてホッとしてしまったから。
 仕事ができるから。
 キスがうまいから?
 
 契約してたったの一ヶ月で即落ちしているなんてダメじゃない?
 まんまと隼人の思うツボじゃない。
 半年たって会社を取られて、みんなもリストラされて、一年後にポイされたらどうするのよ。
 しっかりしろ、私!
 
 アラサーのくせに、腰を抱かれて花火を見ているだけで恋する乙女のようにドキドキが止まらないのはマズいでしょう。

「花火は日本の方が綺麗だな」
「違うの?」
「アメリカは色が変わらない」
 隼人が見つめる先の夜空では、打ち上げられたピンクの丸い花火が青色にピカピカ光って変わって消えていく。
 星形、ハート、そして牡丹と花火は休むことなく続いた。

「わっ、すごい」
 単色のスターマインから金粉がサラサラと無限に降り注ぐ重厚な錦冠の乱れ打ちに変わり、カラフルな花火が息つく間もなく打ち上げられる。
 最後に大きな花火がひとつ打ち上げられ、花火大会の終わりが告げられた。

「……すごかった」
「来年は下から見るか? 上から見るか?」
「そんなような映画のタイトルあったわ」
 上じゃなくて横だけれどと遥は笑いながらツッコむ。
 
 そうか。今すぐ結婚しても一年間は離婚不可だから来年の花火大会はまだ一緒なんだ。

「来年は下がいい」
 来年の話をするなんてどうかしていると自分でも思う。
 でもうれしそうに笑う隼人の顔から目が離せないのは事実だ。

 今だけ。少しだけ恋愛してもいいのだろうか。
 会社を守りたい気持ちは変わらないから。
 ちゃんと会社は守るから。
 
「夕飯、食べて帰るか」
 隼人の高級腕時計は20時33分。
 花火も終わり、カップルたちはどんどん帰っていく。
 
「何がいい?」
「ラーメン!」
 どう? 困ったでしょ。
 店の当てがなければ、私の行きつけの庶民的なラーメン屋さんに連れて行ってあげるけれど。

「わかった」
 車に乗れと言われた遥は、ちらっと隼人の顔を見る。
 困った雰囲気も、スマートフォンで検索する素振りもないし、カーナビに入力もしないけれど大丈夫なの?
 
 車は走り出し、丘の上から狭い道を通って大通りへ。
 見慣れた景色になったと思ったら、車は駅前の駐車場に入った。

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