こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「ファンデーションがなくなりそうだし、靴も見たいし、あとはネイルの予約してあるの」
「そんな話は聞いていない」
「言っていなかった?」
あれ? 言わなかったっけ?
ネイルの店長と約束したのは、お嬢様と揉めて動画広告を一週間だけ流してもらえると話した時だから、一ヶ月前。
そのあと火事で在宅勤務で……言っていないかもしれない。
「あー、ごめんなさい。いろいろあって言うの忘れていたかも」
かもではない。絶対忘れていた。
チラッと確認すると、溜息をつく隼人の姿が見える。
「夕方には戻るから」
「報道陣に気をつけろよ」
「大丈夫、大丈夫。私の顔を知っている報道陣なんていないわ」
ちっちゃい会社の二代目社長の顔なんてホームページに載せていないし、誰も知らないだろう。
会社の問い合わせメールに悪戯メッセージが届いても、全部速攻ゴミ箱だし。
そんなこと、いちいち気にしていられない。
まだ何か言いたそうだった隼人に手を振りながら、いってきますと遥は玄関を出る。
百貨店でいつものファンデーションを購入した遥は予約時間にネイル店へ向かった。
「爪が紅葉しているわ」
「イチョウの葉のようなくすみイエローにゴールドの組み合わせが好きで」
「素敵ね」
さすがだと遥が褒めると、店長は嬉しそうにはにかんだ。
会社の人ではなく、学生時代の友人でもなく、同じ業種でもないネイル店の店長との会話は楽しい。
「CEOが料理!?」
「ビックリでしょ。これがまた犯罪級にうまいのよ」
犯罪級ってと店長が思わず吹き出す。
普段誰にも言えないこともつい話してしまうほど、店長は聞き上手だった。
「お肉の塊に、上の方からペッパーをゴリゴリ削ってそうです」
店長から見た隼人のイメージに、遥も思わず笑ってしまう。
和食も洋食も、隼人は何でも作れるのだと遥は店長に話しながら、自分の悩みも打ち明けた。
「私ね、料理がまったくできないのよ」
子どもの時、母が料理中に台所で亡くなり、数年間は包丁を見ることすらできなかった。
家庭科の調理実習も欠席させてもらうほど。
食事はほとんど外食。
子どもの頃はお弁当や総菜をレンジで温めるだけの日も多かった。
「少しくらいできた方がいいかなと思ったんだけど、カレーすらまともにできなかったわ」
「お料理教室に通ってみるとか?」
OLさんも多いですよと店長は知人が通っている料理教室のホームページを見せてくれる。
「遥さん、今度一緒に体験行ってみませんか?」
「人参の皮も剥けないけれど大丈夫?」
「こっちの初心者コースならいいんじゃないですか?」
「あとでそのページ教えて」
ネイル硬化中で手を動かせない遥は、店長と後日体験の日程を決めようと約束し合う。
あまりのできなさ具合にひとりでは恥ずかしかったが、一緒に行ってくれる人がいるなら勇気が出せそうだ。
「……遥さん、振り返らないでくださいね。さっきから変な人が店の前をうろついています」
明らかにネイルとは縁がなさそうな男性が、先ほどから店の前をうろうろしていると店長が小声でつぶやく。
帽子を深くかぶった40~50代の眼鏡の男性。白いTシャツにベージュのチノパン、斜め掛け鞄で手にはスマートフォンを持っていると店長は遥に男の特徴を告げた。
「そんな話は聞いていない」
「言っていなかった?」
あれ? 言わなかったっけ?
ネイルの店長と約束したのは、お嬢様と揉めて動画広告を一週間だけ流してもらえると話した時だから、一ヶ月前。
そのあと火事で在宅勤務で……言っていないかもしれない。
「あー、ごめんなさい。いろいろあって言うの忘れていたかも」
かもではない。絶対忘れていた。
チラッと確認すると、溜息をつく隼人の姿が見える。
「夕方には戻るから」
「報道陣に気をつけろよ」
「大丈夫、大丈夫。私の顔を知っている報道陣なんていないわ」
ちっちゃい会社の二代目社長の顔なんてホームページに載せていないし、誰も知らないだろう。
会社の問い合わせメールに悪戯メッセージが届いても、全部速攻ゴミ箱だし。
そんなこと、いちいち気にしていられない。
まだ何か言いたそうだった隼人に手を振りながら、いってきますと遥は玄関を出る。
百貨店でいつものファンデーションを購入した遥は予約時間にネイル店へ向かった。
「爪が紅葉しているわ」
「イチョウの葉のようなくすみイエローにゴールドの組み合わせが好きで」
「素敵ね」
さすがだと遥が褒めると、店長は嬉しそうにはにかんだ。
会社の人ではなく、学生時代の友人でもなく、同じ業種でもないネイル店の店長との会話は楽しい。
「CEOが料理!?」
「ビックリでしょ。これがまた犯罪級にうまいのよ」
犯罪級ってと店長が思わず吹き出す。
普段誰にも言えないこともつい話してしまうほど、店長は聞き上手だった。
「お肉の塊に、上の方からペッパーをゴリゴリ削ってそうです」
店長から見た隼人のイメージに、遥も思わず笑ってしまう。
和食も洋食も、隼人は何でも作れるのだと遥は店長に話しながら、自分の悩みも打ち明けた。
「私ね、料理がまったくできないのよ」
子どもの時、母が料理中に台所で亡くなり、数年間は包丁を見ることすらできなかった。
家庭科の調理実習も欠席させてもらうほど。
食事はほとんど外食。
子どもの頃はお弁当や総菜をレンジで温めるだけの日も多かった。
「少しくらいできた方がいいかなと思ったんだけど、カレーすらまともにできなかったわ」
「お料理教室に通ってみるとか?」
OLさんも多いですよと店長は知人が通っている料理教室のホームページを見せてくれる。
「遥さん、今度一緒に体験行ってみませんか?」
「人参の皮も剥けないけれど大丈夫?」
「こっちの初心者コースならいいんじゃないですか?」
「あとでそのページ教えて」
ネイル硬化中で手を動かせない遥は、店長と後日体験の日程を決めようと約束し合う。
あまりのできなさ具合にひとりでは恥ずかしかったが、一緒に行ってくれる人がいるなら勇気が出せそうだ。
「……遥さん、振り返らないでくださいね。さっきから変な人が店の前をうろついています」
明らかにネイルとは縁がなさそうな男性が、先ほどから店の前をうろうろしていると店長が小声でつぶやく。
帽子を深くかぶった40~50代の眼鏡の男性。白いTシャツにベージュのチノパン、斜め掛け鞄で手にはスマートフォンを持っていると店長は遥に男の特徴を告げた。