喰 喰

『俺が好き?』か?
そんなの誰だって憧れるよ。
私も好きだと言ってしまったのは焦り。
けれど、それは自分から告白をしてまで付き合いたいとかではない。
夢のような軽い妄想止まり。
それに。『好きな人がいる』と断ったのを目撃したのは何だったのか。
そう、他に好きな人がいるなら。
自分の気持ちに区切りをつけたい。
便乗して言ってしまえば、スッキリするかもしれないと。安易な考え。
あの子のように、『好きな人がいる』と言われて受け入れたかった。
少なからず、私の気持ちを知って欲しかった。
あなたに好意を持ったのは本当だから。
「君が告白したのは俺……君が見ていない俺は、好きでもない奴だよね?」
彼の目は鋭く、逸らすことが出来ない。
私が見ていない?それは、どういうこと?
理解できない言葉が、耳に入ってくるけど反応が出来ない。
何を言っているの?
怒っているのは分かる……
頭に浮かんだのは。謝らなければ!
「ごめんなさい!忘れて欲しいの。私……あの……」
「嫌だよ。君が言ったんだ……好きでもない奴と付き合っても、そのうち好きになるかもしれないって。好きになればいい……俺じゃないオレを。」
怖くて、足が後ろに下がる。
【グイッ】
彼は速いスピードで私に近づき、手を引いた。
「逃がさない。“俺たち”の彼女……だろ?」
『彼女』って?好きな人がいるんだよね?
それに。『俺じゃないオレ』『俺たち』……この言葉の意味を知るのは……


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