幼馴染のち恋模様

1時間後________

葵の会社近くで車を停め待っていると、サイドミラーに走ってくる葵が写る。
運転席から降り、歩道に出て葵を迎える。

「ごめんね待たせて!」

梗介を見つけ、言いながら走ってくる葵に近づいていく。
梗介の前で止まった葵をすかさず抱きしめた。

「ちょっ、梗介!?ここ外だよ!」

想像通りの慌て方をする葵が可愛くて抱きしめる力を強める。

「お預けくらったからこれくらい許せ」
「うっ・・・でも、見られてて恥ずかしいよ・・・」

普通に大通りの歩道なので、たくさんの人が行き交う。
俺は全く気にならないので葵の顎に手を当て上を向かせると、顔を近づける。

「んむっ」

葵の手が梗介の口元を塞ぐ。

「なっ、何しようとしてるのっ!」
「言わせたいの?」
「っ〜・・・!もうっ、早く行こう!」

真っ赤になりながら顔を逸らして歩き出す葵を、笑いながら追いかけた。

車に乗り込み役所へ向かう。
時間外なので当直室で婚姻届が受理された。
事務員さんの「ご結婚おめでとうございます」という言葉に、体の芯から湧き上がる喜びで震えた。

「これで正真正銘、夫婦になれたな」
「これからよろしくお願いします。旦那様」
「こちらこそ。奥様」

お互いお辞儀し合って慣れない呼び方をしてみる。違和感がありすぎて二人で吹き出した。
自然と手を繋いで車へ戻る。

「そういえば、ご褒美くれるんだよな?」
「あぁ、そんなこと言ってたね・・・何が欲しいの?」

まだ母親のようなこと言っている葵にスイッチが入る。
軽いものしてやろうと思っていたがやめだ。

「葵からキスして。深いやつ」
「キッ、深っ・・・!無理だよ!ご褒美って、何か買ってくるものだと・・・」

やっぱりか。

「仕方ない」

そう呟いて葵の手を引く。車の後部座席に乗り込み、葵を膝に乗せドアを閉める。

「梗介!?」

慌てる葵を自分の足を跨らせるように座らせ直すと腰を抱いて引き寄せた。

「ここまで舞台を整えたんだ、出来るよな?」

葵の頬を撫で挑発する。
真っ赤な顔で俯きながら唇を引き結んでいる葵。

「手伝うから。おいで」

葵は梗介に促され顔を近づける。

「目、閉じてて・・・」

梗介の頬に手を添え小さく囁く葵からのお願いに押し倒したくなるが、グッと堪え素直に目を閉じる。
視界が閉ざされると、神経が研ぎ澄まされ葵の匂いや呼吸、動きがいつもより感じられて堪らない気持ちになる。
ふわっと葵の匂いが濃くなった時、唇に軽く触れる感触。啄むようにぎこちなく重なる唇に愛しさが込み上げる。

可愛い。

梗介の頭の中はその言葉で埋め尽くされていた。
ちょんと舌が唇に触れ、絡めやすいよう梗介も差し出す。
葵の口から漏れる吐息や絡まる水音が腰に響く。一生懸命にチロチロ動く舌がくすぐったくて下半身に熱が集まる。
葵の思ったよりも意欲的なキスに我慢できなくなり葵の後頭部を引き寄せた。
力が抜け体重をかけてくる葵を、褒めるように撫でながらキスを深める。
このままここで抱いてしまいたい衝動に駆られる。しかし、スモークがかかっているとは言え、万が一にも葵のあの姿を誰かに見せたくはない。
名残惜しいが唇を離す。
透明の糸が二人の唇を繋ぐ。

恍惚な顔でトロンと蕩けている葵にもう一度キスをして抱きしめると、葵の呼吸が落ち着くまで髪を梳く。

「梗介のエッチ」

不貞腐れても可愛いとは何事だ・・・。

「葵の方がエロいだろ。あんなキスどこで覚えてきたんだ?」
「誰かさんがいつもするから!」
「ふはっ、可愛いな葵」
「甘やかしてもダメ!」

甘やかしたくもなる。

「やべっ、予約の時間忘れてた」
「そうだ!大変!」

助手席と運転席に移動し急いでレストランに向かった。

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