幼馴染のち恋模様

しばらく囲まれていた梗介が根を上げたのは来店して15分が経った頃。ご自慢の尊顔でおばさんたちに「そろそろお腹が空いて・・・美味しい定食いただけますか?」
と王子様スマイルをお見舞いしていた。そんな技を習得していたのかこの男は。いや、昔も保護者世代に人気だったな・・・。

「やだ私ったら!そうよね、何食べる?サービスして大盛りにしとくわ!」
「葵が唐揚げ定食がおすすめだって言ってたから唐揚げ定食で。葵は?」

あれは言葉のあやというか・・・唐揚げ定食なら学生の時に何度も食べていたのに・・・。

「私も唐揚げ定食で」
「高校生の頃もよく食べてたわよね〜。味は変わらないけど愛情たっぷり入れとくわ!」

ウインクして去っていくおばさんに梗介が息を吐く。

「ふぅ〜やっと解放された・・・」
「熱烈な歓迎でしたね」
「相変わらず温かい街だよね」

満更でもない顔の梗介が今度は含みのある顔で付け足す。

「まぁ一番の収穫は葵を見つけたことだけど」
「へっ?」

私の名前が出てくるとは思わず素っ頓狂な声が出る。
ニコニコと私を見つめる梗介に戸惑う。

「どういう、意味でしょうか?」
「そのままの意味。葵は俺のことなんて忘れてたんだろうけど、俺は一度だって葵のこと忘れたことなかった」

梗介の真剣な、だけどどこか切ない表情に心が揺らぐ。
私だって・・・。
結婚してるくせに、どうしてそんなこと言うの・・・。
指輪のことを切り出そうかと息を吸ったと同時。

「お待たせ〜!唐揚げ定食よ〜!」
「うわ、うまそうっ」

無邪気に目を輝かせる梗介。

「ご飯はおかわり自由だからね〜いっぱいお食べ!」

梗介は「食べよう」と言って私にお箸を差し出した。まずは腹ごしらえか、とも思い箸を進めることにした。向かいで美味しそうに唐揚げを頬張り「うん。これこれ」と神妙に頷く梗介に恨めしげな目を向けてしまう。絶対今日聞いてスッキリする!唐揚げにかぶりつきながら内心覚悟を決めた。


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