幼馴染のち恋模様

「ご馳走様でした」

立ち上がりおばさんに声をかける梗介。

「梗介くんもう帰るの?絶対また来てよ〜?」
「もちろん。俺はこの定食屋に胃袋掴まれちゃってるから」
「言ったわね〜?浮気は許さないわよ!葵ちゃんもまた来てね!」
「うん。ご馳走様でした」

挨拶をしてから店を出る。3月初めのまだ冷たい風が並んで歩く二人の間をすり抜けていった。
歩き始めてからふと気がつく。

「そういえば、この前の取材の件での質問はなんだったんですか?」

地元トークで終わってしまって聞けていなかった。

「あぁ・・・あれはただの口実。あぁでも言わないと来なかっただろ?」

確かに・・・。いや、納得してどうする。

「だとしても仕事を口実にするのはやめてください」

隣を歩いていた梗介が葵の前に回り込む。そっと手を取りぎゅっと握った。

「分かった、もうしない。・・・その代わり、俺から逃げないで」

まただ・・・。思わせぶりなことして揶揄っているのだろうか?この際ハッキリさせるべきなのだろうと手を振り払う。

「東雲さんは結婚されていますよね?今日は指輪をしていないみたいですが、相手の方の気持ちを考えたことはありますか?」

弄ばれるほど下に見られているのかと怒りが込み上げ、冷たい声色でつらつらと捲し立てる。

「今日は仕事の件だと伺ったので食事にも付き合いましたが今後は「ちょっと待った!」

梗介が焦ったように遮る。

「やっぱり誤解してる・・・違うから。結婚してないよ、俺」
「・・・じゃあなぜ指輪を?」
「自分で言うのは気が引けるけど・・・向こうで結構言い寄られることが多くて、毎回断るのも面倒だから結婚してることにしてた。この前俺の事務所に来た時に説明するはずだったんだけど、葵、速攻で逃げてくし連絡先聞けないままだしで今日になった。だから、俺は誓って結婚してない。はぁ・・・やっと言えた・・・」

まさか本当に真緒の言った通りだとは・・・葵は唖然とする。
それを疑われていると捉えたのか最後の手段だとでも言うように梗介が告げた。

「役所に確認しに行ってもいいぞ」
「そこまでしなくていいよ・・・」

安堵のためか全身の力が抜け、タメ口に戻る。


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