幼馴染のち恋模様【完】
車内の窓から満月を見上げる。
「良かったの?藤堂さん送らなくて・・・」
ひと段落して帰ろうとしているところで一悶着あったのだ。
瑠奈は送って行けとせがみ、梗介は断固拒否。引き下がらない瑠奈に梗介がタクシーを呼びタクシー代も支払ったことで落ち着いた。
「なんで俺が送らなきゃならないんだよ。俺は葵と二人がいい」
梗介はいつも言葉や行動で示してくれる。何かあれば言ってくれるはずだ。
「今度は送ってあげてね。あんなに綺麗な人が夜道を歩いてたら、それこそ何かあるかも知れないし・・・」
「・・・妬いてくれないのか?」
「え!?」
車が自宅の前に着きゆっくり停まる。
梗介はシートベルトを外し、唖然としている葵の手を握る。
「葵は俺が他の女性といても気にならない?」
気にならないわけない。さっきだって・・・。
「ごめんね・・・さっきのは、強がっただけ。梗介が藤堂さんと話してるの見て、羨ましかった。藤堂さんは私の知らない梗介をたくさん知ってるんだろうなぁって・・・」
高校生の頃の梗介が浮かぶ。
「梗介のこと一番知ってたのは、私だったのにって・・・」
「葵・・・」
俯く葵を梗介は苦しげに見つめ、握る手の力が強まる。
「正直に話すけど、イギリスにいる時瑠奈と付き合ってたんだ・・・。葵を忘れた方がいいのかもって・・・半ばヤケクソだった」
やっぱりそうだったんだ・・・。胸がキリキリと痛む。
けれど梗介は少し笑って続けた。
「けど、言われたよ「私を通して誰を見てるの?」って・・・。俺は出会った時からずっと、葵しか見てない。見えない。葵だけが、俺の心にずっといる」
梗介の言葉はどうしてこんなに真っ直ぐ響くのか・・・。
「ずっと・・・?」
「あぁ、ずっと」
梗介の手が葵の頬を撫でる。キスの合図・・・。
慈しむように唇が重ねられ、心を満たす。
「梗介・・・好き」
梗介の目を見て伝える。
「それは反則っ」
梗介の手が後頭部に回りキスが深まる。絡む水音が車内に響き耳をくすぐる。
「葵・・・もっと」
梗介の色っぽい声に体の奥が疼く。背中に回る葵の腕を首に回させるとさらに密着する体。まだ足りないとばかりにキスが深められ、もう何も考えられない・・・。
チュッと音を立てて唇が離れると、少し寂しい。
「はぁ・・・葵、あんまり煽んないで。マジで止めらんなくなる・・・」
梗介は顔を覆って俯く。
「私煽ってた?」
なんのこと?と首を傾げる葵に梗介はまたため息をこぼす。
「それも!首傾げて見つめるな!可愛い!無自覚が一番タチ悪いぞ・・・」
なんだか疲れ果てている梗介に申し訳なくなり一応謝る。
「えと・・・ごめん、ね?」
「工事の件落ち着いたら覚悟しとけよ。嫌って言っても止めてやらないし、朝まで抱き潰すから」
「だっ!?朝!?」
梗介の大胆発言に軽くパニックに陥る。
「今日は勘弁してやるからゆっくり休めよ」
ニヤニヤしながら葵の頭を撫でる。
眠れるわけない!