幼馴染のち恋模様

その後、再度調整会議が開かれ工事の中止が決定された。
そのことで予算が超過するためベンチの案は廃止。フリースペースよりもカフェスペース優先で修正案が出され梗介も憤る。

「カフェだけじゃなくても採算は取れます。フリースペースはイベントなどで時間貸しをして収益を得ます。この街ならではのワークショップやマルシェを開催する。その運営費は商店街や、学校、企業スポンサーと連携し、使用料・協賛費で回してもらう。こうすることで場所そのものが広告媒体になる。」

梗介の言葉に各々が渋々頷いている。

「全部で儲けようとするから、公共性が壊れる。なら、儲ける場所と守る場所を分ければいい」

「建物自体は一回建、建築コストは抑えられる。設備も凝ったものではなくシンプルにすることで維持費を削減。稼働家具を置くことでイベント時に即座に転用できる。初期投資とランニングコストを下げることで薄利でも成立する構造にすればいい。ここまで言ってもまだ不安ですか?」

若手である梗介にぐうの音も出ないほど詰められ素直に頷けなくなっているのかもしれない。
そこで葵がもう一押し!とこの前まとめたアンケートと私が出した記事への地元民の声を伝える。

「すみません。私からもよろしいでしょうか」
「君は取材に来ている・・・」

市の職員の声を遮り話し始める。

「先日、私がタウン誌に載せた記事へ読者の方からこんな声が届きました。「座れる場所がほしい」「雨の日に助かる」など、資料をお持ちしましたのでご確認ください。それから、これは私が霜月駅前でアンケートをとった時の音声です」

ボイスレコーダーから私の声と聞き込みに応じてくれた人たちの声が流れる。

「空きテナントの改装でフリースペースや外にベンチなどができたらどうですか?」
「それは助かるな〜」
「雨の日とかは待つ場所に困ってたから嬉しいです」
「うちの子は電車とかでも泣いてしまうことが多いので、外にベンチを置いてくれたら気兼ねなくほっと一息つけると思います」

ピッと再生を止める。

「これがこの街に住むこの街の方たちの声です。どうか聞き流さず検討いただきたいです。この人たちのためのプロジェクトですから」

話を聞いた人たちの顔を思い浮かべながら微笑む。
梗介と目が合い、お互い頷き合った。

「そうですね。これだけの声が集まっているんだ・・・東雲さんの言い分には説得力もある。その案で通しましょう」

葵は心の中でガッツポーズする。
嬉しくて飛び跳ねたい気分だった。

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