幼馴染のち恋模様
温もりに包まれて薄目を開けると、目の前には爽やかな笑顔で微笑みながら肩肘をついて葵を見下ろす梗介がいた。
カーテンの隙間からは日差しが差し込み一筋の線を描いている。
「おはよう、葵」
昨日のあれこれが脳内を駆け巡り、顔が沸騰する。勢いよく布団に潜り梗介を視界から消す。
「なんで隠れるんだよ」
「なんでそんな平然としてるの!」
「念願が叶ったからな」
梗介の声が弾んでいる気がして更に恥ずかしくなる。
布団の中で悶えていると、先程とは違う梗介の優しい声が聞こえてきた。
「体平気か?」
布団から顔の上半分だけを出す。
「ちょっと腰痛いけど大丈夫」
「今日仕事?」
「うん」
「俺も事務所に顔出さなきゃなんだ。多分泊まり込みになるからそのまま出張戻ると思う」
梗介の言葉に現実に引き戻された。
また、離れ離れ・・・。
「いつ帰ってくるの・・・?」
「・・・・・・3ヶ月後」
「っ・・・!」
そんなに・・・?不安を顔に出すべきではない。分かってる。でも・・・。
「葵・・・ごめんな」
苦しそうに顔を歪ませて抱きしめられる。
梗介だってきっと想いは同じ。ならしっかりしないと。
「ううん。・・・帰ってきたら、どこか出掛けようよ!楽しみがあればきっとあっという間だと思うの!」
不安を断ち切るように明るい声を出す。
梗介は葵が無理して明るくしていることに気づいている。影を残した笑顔で葵に答えた。
「そうだな。泊まりで出掛けよう」
そう約束をして、もう一度温もりを確かめるように抱きしめ合った。
出勤時間が迫り急いで支度する。梗介は一度帰宅してから出勤するようで、葵を送ってくれることになった。
準備をする時から車に乗り込むまで、ずっとくっついていた。寂しくて、離れがたくて・・・。
しかし、時間というのは残酷で車は葵の会社前に着く。
「葵、すぐ終わらせて巻いて帰ってくるから。電話も掛けるし、メッセージも送る。葵も不安だったり寂しかったりしたら何時でもかけてきていいから」
「何もなくても?」
「当たり前だろ。俺は絶対我慢しないから、葵も絶対我慢するな。分かったか?」
梗介の物言いにふっと笑いが溢れる。
「分かった。・・・・・・・・それじゃあ、行くね」
名残惜しいが今行かないと遅刻してしまう。
梗介はグッと眉間に皺を寄せ葵を力強く抱きしめた。
ぎゅっと抱え込むとすぐに離す。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます。・・・梗介も、行ってらっしゃい」
最後は笑顔でと決めていた。梗介の仕事が上手くいくように、想いを込めて満面の笑みを梗介に贈る。
「あぁ。行ってきます」
梗介も葵に安心を贈るように微笑んだ。