幼馴染のち恋模様
ロビーのソファーから立ち上がり部屋へ向かう。部屋のドアが見えてきたところで、勢いよく扉が開いた。
バンっ!
出てきたのは乱れた浴衣姿の梗介だった。
「梗介・・・?」
私の声に反応して目が合う。梗介の目はこれでもかと見開かれ、勢いよく向かってくる。
「葵っ!!」
大きな声で名前を呼ばれ驚いていると、次の瞬間には痛いくらいの力で抱きしめられていた。
「ど、どうしたの!?いっ、痛いよ梗介・・・一旦、部屋に入ろう?」
葵を抱きしめたまま震える梗介が心配になったが、こんな往来のど真ん中で抱擁しているのはまずい気がして、梗介を引きずりながら部屋の中に入る。
「梗介・・?何かあったの?怖い夢でも見た?」
「・・・・・・・・」
背中を摩りながら声をかけるが言葉が返ってこない。
梗介の体は震えていて、心臓が速く鼓動しているのが分かる。
抱きしめられたままの体勢で頭と背中を撫でていると、梗介が大きく息を吐いた。
「・・・はぁ。葵が、またいなくなったかと思った・・・目が覚めて、どこ探してもいなくて・・・怖かった」
梗介にとって、葵との別れやあの言葉がトラウマになっていた。
あの言葉を葵が言われていたら・・・ゾッとした。それだけのことを言ってしまったのだと、後悔する権利すらないのかもしれない。
「梗介、ごめんね。いなくなったりしない。もう絶対、梗介の前から勝手にいなくなるような事しないから・・・ごめんなさい」
「葵・・・戻ってきてくれてありがとう」
梗介は心の底から感謝するように言うと、堰を切ったように続けた。
「謝らせたいわけじゃないんだ。だから・・・できるだけ一緒にいて。起きた時は俺も起こして。それから、これからはなんでも話して。俺も話すから。不安は一緒に解決しよう」
切実に届く言葉たちに、もう絶対不安にさせたくないと強く思った。
梗介は抱きしめたまま続けた。
「結婚するんだし一緒に住むわけだから、隠し事はなし。寝る時は抱きしめさせて。行ってきますとおかえりのキスは毎日。葵からももっとキスして。やり過ぎは気をつけるけど毎晩抱きたい。それから、葵の手料理も食べたい。一緒に風呂も入りたい。休日はたくさんデートしよう。あ、あと・・・」
「ちょっ、ちょっとストップ!」
まだ終わってないんだけど?と不満顔で見つめられ、戸惑う。
え?私が悪いの?いやいや、明らかに話が逸れ過ぎてたよね!?一緒に住む!?毎晩抱っ!?ハレンチっ!
「そういう話してたんじゃなかったよね!?」
「してた。俺の不安を取り除くには葵の協力は必要不可欠だ」
当たり前のことを聞くな、みたいな顔で見られても・・・さっきの私の覚悟を返してほしい・・・。
「取り敢えず、一旦離れて?」
「嫌だ」
駄々っ子か?
梗介は私の肩に顔を埋め、スリスリと頭を擦り付けてくる。
可愛い・・・・・・くないっ!
危ない!流されるところだった・・・。
「チェックアウトの準備しよう?というか、梗介って出張中だったよね・・・?戻らなくていいの!?」
そういえばと思い至りだんだん不安になってくる。