幼馴染のち恋模様【完】
屋上は3月初めのまだ冷たさの残る風が吹き抜ける。
フェンス越しに見える校庭には部活に励むサッカー部員たち。
コンクリートの地面には、あの頃よりも大人になった男女の影が伸びる。
「寒いな」
梗介は葵の手を取り指を絡ませると、着ているコートのポケットに入れた。
影が繋がり、寄り添って並ぶ。
「10年経ってるけどあんまり変わってないね」
「そうだな・・・あの頃のままだ」
ここで一緒にお弁当を食べたり、宿題したり、放課後お喋りしたり・・・梗介との思い出がたくさん詰まっている。
あの時の記憶もあの時の感情を残したまま蘇る。
今の梗介ならなんと答えるのか興味が湧いた。
「ねぇ・・・私に彼氏ができたらどうする?」
「は?」
戸惑う梗介にもう一度問う。
「私に彼氏ができたらどうする?」
「できる前に俺が貰う。葵の彼氏も夫も俺じゃなきゃ許さない」
即答されて驚いたが、あまりの独占欲に笑ってしまった。
「あははっ、梗介変わりすぎ!」
「はぁ、なんであの時もこう言えなかったのか・・・過去の自分を殴りたい」
片手で顔を覆い項垂れる梗介。
「30歳になる前に相手が見つかって良かった」
「もうそれ忘れてくれ・・・何歳になっても葵の相手は俺だけだから」
「絶対だよ?」
「当たり前。こんなに好きなのに手放せるわけないだろ」
梗介の優しいキスが降ってきた。
「ふふっ、冷たい」
お互いの唇が冷たくて笑い合う。
「もっとしたら温まるかも」
イタズラに笑う梗介の顔が近づき、さっきよりも密着する唇。漏れる息は白く染まり空へ流れていく。
食むように重ねられるが、深まる寸前で唇が離れていき不思議に思う葵。
「そんな顔してるとここで襲うぞ?」
「どんな顔!?」
葵の耳元に顔を寄せ囁く。
「物足りないって顔」
自分はそんな顔をしてしまっていたのかと顔に熱が集まる。
「そんな顔してない!」
「帰ったら嫌ってほどしてやるから安心しろ」
「安心できないですけど!?もうっ、寒いから屋上終わり!」
怒って扉へ向かう葵に手を引かれ笑いながら葵の後ろをついて行く梗介だった・・・。