あなたは狂っている

霧生家

霧生邸は、都心から少し離れた高級住宅街にあった。
広大な敷地に建つ、近代的な豪邸。
黒を基調とした外観は、まるで要塞のようだった。
霧生が玄関のドアを開けると、家政婦が深く頭を下げた。

「お帰りなさいませ、お坊ちゃま様」

霧生は無言で頷き、靴を脱いだ。
リビングに向かうと、若い女性がソファに座っていた。
霧生美玲(きりゅうみれい)。霧生の継母だ。
27歳。霧生より5歳も年下。
2年前、父・霧生巌(きりゅういわお)が再婚した相手。
美玲は、雑誌を読んでいたが、霧生に気づくと顔を上げた。

「あら、冥さん。お帰りなさい」

声は甘く何処か霧生に媚びる笑顔。
霧生は美玲に微笑んだ。

「お母さま、お久しぶりです。父はどこです?」
「お母さまね……あの人は書斎よ。いつも通り」
「ありがとうございます」

霧生は丁寧に頭を下げて階段を上がった。
美玲が霧生の背中を見つめている。

「冥さん」

霧生の足が止まった。
振り返り、美玲を見る。

「はい、なんでしょう」
「明日、パーティーがあるの。あなたにも顔を出してほしいわ」

霧生は軽く頭を下げて

「申し訳ございません。明日は仕事が立て込んでいまして」

そして、そのまま2階へと消えた。
美玲は少し不貞腐れた顔を浮かべた。
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