あなたは狂っている

1度だけなら言うことを聞きます

夕方、副社長室のドアが開いた。
琴美が顔を上げると霧生が、そこに立っていた。
琴美は、息を呑んだ。

「何か?」
「あ、あの……なぜ……なぜ、私の家族を助けたんですか?」

霧生は、首を傾げた。

「俺が、そんなことをしたのか?」
「とぼけないでください」
「証拠は?」

琴美は、言葉に詰まった。

「君は俺の提案を断った。ならば、俺が君の家族を助ける理由がない」
「でも……」
「帰れ」
「え?」
「君に用はない」

異常に冷たい目をしていた霧生に琴美は背筋が凍った。
しかし琴美は、拳を握りしめ力をこめた。

「ありがとうございます」

琴美が、深く頭を下げた。

「もし……もし、あなたが助けてくれたのなら……」

琴美の声が震えた。

「本当に、ありがとうございます。でも必ず全て返します!絶対に!」

それだけ言うとパタパタと逃げるように去っていった。
霧生の唇が、わずかに上がった。

「面白い……」

霧生の目が、細められた。

「もう少し、遊ぼうか……中静琴美」
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