【SS集】クリスマスに甘い恋を。
「今夜、電話してほしい。寝ないで待ってるから」
「っ…で、電話なんて、するつもりないからっ!」
そう言って、朝陽の真剣な瞳から顔をそらした私だけど。
「また会いたい。だから、夜まであいさつの言葉はとっておくね。汐音ちゃんが幸せな気持ちで帰れるように」
朝陽は私の手を両手で包んで、サンタ服みたいに赤い唇を、ちゅっと、私の指に触れさせた。
ひんやりした空気も はねのけるくらい、手が熱い。
「またね、汐音ちゃん」
私と目を合わせた朝陽はほほえんで、ゆっくり手を離す。
それがすこし名残惜しく感じた気持ちを否定するように、私は「ばいばいっ」とあいさつを返して、朝陽に背中を向けた。