【SS集】クリスマスに甘い恋を。


「だって、俺が卒業したら伊月、ひとりぼっちになるでしょ?この部室に伊月1人だけ、なんて光景、想像しただけでも痛々しいからさ~」


「そ、そんなことないですよ!天文部に入ってる人は他にもいますし、新入部員だって入ってくるかも!」




 つくえをはさんで向かい側に座っている夜久先輩のほうへ、わたし、伊月(いづき)星乃(ほしの)は体を乗り出して言い返す。

 たしかに、星が見えない日中は天文部の活動なんてないし、夜も家でそれぞれ天体観測をするくらいだけど。




「いやぁ、うちは幽霊(ゆうれい)部員の温床(おんしょう)だし。人数がいるからギリ廃部にはなってないけど、ここで青春なんてできないぜ?」




 夜久先輩は眉を八の字に下げて、へらりと笑いながら、“フェロモン”をただよわせているたれ目をわたしに向けた。
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