【SS集】クリスマスに甘い恋を。
「その情熱、他のことに向けたほうが、伊月にとってもいいと思うけどな?」
「わ、わたしは天文部がいいんです。夜久先輩のいる、天文部が…」
「でも俺、来年にはいなくなるよ?」
文化祭を過ぎたら引退していく人が多いなかで、12月になっても部室に顔を出してくれる夜久先輩。
そんな先輩から現実を突きつけられると、わかっていたことのはずなのに、ズキリと胸が痛んだ。
思わずうつむいて、唇を引き結びながら、ギュッとにぎった両手を見つめる。
「…ごめん。伊月が天文部に来て、ずっと活動してたの、うれしかったよ。だから、かわいい後輩にさみしい思いをさせるのは、いやなんだ」
もしかしたら、まだ部室に顔を出してくれるのは、わたしをひとりぼっちにしないためなのかな。
夜久先輩の気遣いはうれしい。うれしいけど…。