【SS集】クリスマスに甘い恋を。
「…やっぱりいるんですか?彼女」
わたしはシュンとして、上目遣いに夜久先輩のととのった顔を見つめた。
すると、夜久先輩はふっと大人びたほほえみを浮かべて、形のいい唇を動かす。
「こう見えて身持ちが固いの、俺」
「…はあ」
つまり…どっちなんだろう?
もやもやしたまま夜久先輩を見つめていると、夜久先輩はほおづえをやめて、体を起こした。
「で、さ。これはけっこう本気で言ってるんだけど、伊月、今のうちに天文部やめなよ」
「…っ、い、いや、です…!」
天文部に入ったきっかけである夜久先輩にそんなことを言われるなんて、目頭が熱くなってくる。
スカートの上で両手をにぎり、木陰が落ちた夜久先輩の顔を、泣かないように見つめた。
夜久先輩は私を見つめ返すと、小さくため息をもらす。