【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
プロローグ


「美宙ちゃん、顔隠さないでこっちを見て」

「……だ、だって穂貴さんっ、恥ずかしいですっ」


 薄暗い部屋の中、ベッドのスプリングが小さく軋む音が響いている。彼が私の上に跨がっていて、触れる肌で熱い体温が伝わってくる。

 お互いの吐息が乱れ、絡み合いながら部屋を満たしているのに、私だけがどうしようもなく取り乱している。心臓が耳元で激しく鳴り、頬が熱くてたまらない。こんなに近くで彼の顔を見上げるなんて、恥ずかしくて視線を逸らしたくなるのに……彼の瞳はまっすぐに私を捉えていて、逃げられない。


「恥ずかしいことはないよ。可愛い顔、もっと見せて」


 艶っぽく掠れた声で囁かれると、胸の奥がきゅっと締めつけられる。彼の指が私の指に絡まり、優しく、でも確実にぎゅっと握ってくる。
 その温もりが伝わる瞬間、私の心は反射的に彼を求め、同じ力で握り返してしまう。どうしてこんなに簡単に、彼のペースに飲み込まれてしまうのだろう。

 たったの半年という短い時間で、私の心はもう彼なしではいられないほどに染まってしまっている。


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