【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜



 意気込んでいるうちに顔合わせをする会場のホテルに到着してしまったようだ。
 運転手さんがドアを開けると、エスコートされゆっくりと降りる。すると、旦那様……いやお父様に「今日はエスコートをしよう」と言われてエスコートされながら私はホテルの中へと入った。

 腕を組む感触が、意外に温かい。
 でも、これは演技なのだと思ったら切なくなる。

 そんな気持ちだったのに、ホテルに入ると世界が一変した。ホテルの中はとても別世界のような空間だ。

 床もピカピカで天井にはシャンデリアがあってキラキラしている。全てが煌びやかでラグジュアリーな空間だった。こんな場所に来たことない私にとって、すべてが眩しくて、圧倒される。心の中で、自分が場違いだと感じる。でも、負けない。今日の役割を果たすんだ。


「では、お待ちください」


 私はエレベーターにお父様と一緒に乗り込んでレストランのある十五階に行き、個室へ案内された。テーブルに椅子が六個並んでいて二人並んで座る。
 部屋の静けさが、緊張を増幅させる。手が冷たくなる。


「……いいか? 今日、来てくださるのはフジノ出版の会長様にその奥様、穂貴くんだ。粗相のないようにな」

「はい……もちろんです」


 緊張はするけど、なんとか頑張ろう。
 でもどんな男性なのかな……写真とか見ていないからわからないけど、私が童顔だからどう思われるかわからない。

 顔がタイプじゃないとか言われたらどうしよう、そんなことを考えていると「藤乃様がいらっしゃいました」と部屋の外から聞こえてドアが開いた。



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