【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
第4話【同居がはじまる。】
同居を始めて一週間が経った。
朝の光がカーテンの隙間から差し込み、穂貴さんの寝顔を優しく照らすたび、私はまだ夢を見ているような気がする。
隣にいるのが彼で、目覚めた瞬間にその温もりが感じられるなんて、半年前の私には想像もできなかった贅沢だ。でも、同時に胸の奥がざわつく。こんな幸せが、私なんかに許されるものなのか。
いつか泡のように消えてしまうんじゃないか。そんな不安が、朝の柔らかな空気の中で、ふと頭をもたげる。心の底から湧き上がる喜びと、過去の孤独が混じり合い、複雑な感情が胸を締めつけた。
如月家の別邸で過ごしたあの静かで冷たさのある日が、時折フラッシュバックのように蘇り、今のこの穏やかさを信じきれなくさせる。
穂貴さんの寝息を聞きながら、そっと手を伸ばして彼の髪に触れたい衝動に駆られるのに、怖くてできない。触れたら、このすべてが幻だとわかるんじゃないか。そんな根拠のない恐怖が、私を躊躇させていた。