【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
体が震え始め、涙が溢れ出した。穂貴さんが慌てて私を強く抱きしめてくれた。
穂貴さんの胸板が温かくて、穂貴さんの息が私の髪にかかる。穂貴さんの愛が、私を包み込んでくれるのに、心の痛みが激しくて、息が苦しい。
「美宙ちゃん! 大丈夫、息して……」
穂貴さんの声が震えていて、痛い。
この人が、私のためにこんなに苦しんでくれている……。穂貴さんの温もりにすがるようにしがみつき、震えが少しずつ収まっていく。でも、涙は止まらない。
記憶が、優しく、でも容赦なく胸を満たしていく。穂貴さんが私の心を支えてくれているからこそ、記憶の痛みを真正面から受け止められる気がする。
「……穂貴さん、私……思い出した」
穂貴さんの体が一瞬固くなり、それからさらに強く私を抱きしめてくれた。穂貴さんの鼓動が速くて、私の心臓と重なって、胸が締めつけられるほど愛おしい。
「ゆっくりでいい……無理しないで。話したくなったら、いつでも。俺、美宙ちゃんのペースでいいよ」
私は穂貴さんの胸に顔を埋め、震える声で語り始めた。言葉を紡ぐたび、記憶が鮮やかに、温かく蘇る。
ママの声、パパの叫び、二人の温もり――涙が止まらなくて、胸が痛くて、でも嬉しい。愛されていた実感が、心を優しく満たした。