【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

216. これは命令よ?

「へっ?!」

 エリナの目が見開かれた。

 愛剣が――数々の強敵を屠り、幾多の修羅場を共に潜り抜けてきた緋剣が、まるでガラス細工のように粉々に砕け散っていた。その破片が、スローモーションのように宙を舞っている。

 あり得ない。

 単に映像表現ではなく、エミュレーションルームの実際の剣が吹き飛んでしまったのだ。

 その瞬間の隙を、シアンは逃さなかった。

 ニヤリと、獰猛な笑みが浮かぶ。

 クルッと優雅に、まるでバレリーナのように回転し、遠心力を乗せた後ろ回し蹴りを放った。

 そいやー!

 宇宙最強を誇る、天界の【ぶっ壊し屋】。その異名は伊達ではなかった。

 身長百メートルの巨体が繰り出す蹴りは、もはや自然災害の域だった。台風でも、地震でもない。世界そのものが牙を剥いたかのような、圧倒的な暴力。その脚が空を切る音は、雷鳴のように響き渡った。

 エリナは咄嗟に両腕を交差させ、防御の構えを取った。しかし、そのエネルギーは想像を絶するものだった。

「ゴハァ!」

 全身の骨が軋む音が、体の内側から聞こえた。視界が歪み、世界がぐるぐると回転する。

 一キロほど吹っ飛ばされながら、湖面を何度もバウンドしながら転がっていく。水飛沫が上がるたびに衝撃が走り、ようやく止まった時には、全身が悲鳴を上げていた。

 くぅぅぅ……。

 立ち上がろうとして、できなかった。

 腕が、動かない。

 脚が、言うことを聞かない。

 剣聖と呼ばれ、大陸最強と謳われた自分が、なすすべもなく地に伏している。その事実が、エリナの心を打ちのめした。


       ◇


「何するのよ!」

 ルナが叫んだ。

「止めてっ!」

 シエルが弓を構えた。

「いけませんわ!」

 ミーシャが両手を掲げた。

 三人はとっさに動いた。エリナを助けなければ。この暴虐を止めなければ。そんな想いだけが、彼女たちを突き動かしていた。

 シエルは弓を引き絞り、銀色の矢を三本同時に放った。風を切り裂く鋭い音とともに、三条の銀光がシアンへと向かっていく。

 ルナは全身から炎を噴き上げ、灼熱の槍を形成した。古代龍すら焼き尽くすほどの熱を込めた槍を、渾身の力を込めて投擲した。

 ミーシャは両手から黄金の光を放ち、拘束用の光のロープを射出した。聖なる拘束具がどこまで効くかは分からないが、時間稼ぎくらいはできるはずだった。

 三方向からの同時攻撃。完璧な連携で放たれた一撃。並の相手なら、確実に仕留められるはずの攻撃だった。

 しかし――。

 シアンは、それを児戯のようにあしらった。

 飛んでくる炎の槍を素手で握りつぶし、光のロープが体に巻き付こうとした瞬間、シアンは腕を一振り――。それだけで、聖なる拘束具は千切れ飛んだ。

 そして、飛んでくる銀の矢を、魔法で軌道を逸らした。三本の矢は空中で軌道を変え、そのまま――三人に向かって飛んでいった。

 きゃぁっ! ひぃっ! 危ない!

 自分たちの攻撃が跳ね返されるという屈辱。避ける暇もなく、三人は自らの矢に撃ち抜かれ、吹き飛ばされた。湖面を転がり、水飛沫を上げながら倒れ込む。

 四人の王妃が、全員倒れ伏した。

 立ち上がれる者は、誰もいなかった。


       ◇


「何よあんた達、つまんないわねぇ」

 シアンは心底退屈そうに言った。

 腕を組み、四人を見下ろすその目には、失望と苛立ちが入り混じっている。

「そもそも、十五年もの間何やってたのよ?」

 その視線が、放送席のレオンへと向けられた。

「え? これはお祭りで……」

「このお遊戯のこと言ってんじゃないの!」

 シアンの声が、雷鳴のように轟いた。

「人口もまだたった百万ぽっち。他の国なんて全部占領して、もっと人口増やしなさいよ!」

「そ、そんな強引なことやったら、大混乱して死者もたくさん出ちゃうじゃないですか」

 レオンは必死に反論した。それは、彼の信念だった。平和的に、対話によって、少しずつ世界を変えていく。それが、レオンの選んだ道だった。

「かーーっ! そんなヌルい発想してっからダメなのよ!」

 シアンは苛立たしげに髪をかき上げた。

「私が今、大陸中の軍隊全部ぶっ潰してあげようか?」

「あ、いや、やるときは自分たちでやりますので大丈夫です」

「いつやるのよ?」

「え、そ、それは……」

「今すぐやんなさい。これは命令よ?」

 シアンの声が、冷たく響いた。もはや遊びの要素はない。純粋な命令だった。

「今すぐ大陸征服……ですか?」

 レオンはシアンのとんでもない命令に圧倒された。今すぐ? 準備もなく? 戦略もなく?

「そうよ? ちょうどそこに王侯貴族集まってんだから話早いでしょ?」

 シアンは貴賓席を指さした。

 そこには、レスター三世をはじめとする各国の諸侯たちが、青ざめた顔で事態を見守っている。彼らにしてみれば、とんでもない災難だ。友好を確認しに来たはずが、突然熾天使(セラフ)により滅ぼされようとしているのだから。

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