【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~
25. 不気味な沈黙
これが本当のパーティなのだと、レオンは感慨深く思った。
カインたちといた頃には、こんな瞬間はなかったのだ。
いつも緊張していて、いつも気を遣っていて、心から笑うことなんてできなかった。
でも、今は違う。
今は、心の底から楽しい。
「ふふっ、待ちなさいな」
ミーシャも優雅な足取りで、でも驚く速さで後を追う。聖女の微笑みを浮かべながら。
「あたしが一番乗りよ!」
「ボクだって負けないんだから!」
「こら、走るなって! 転ぶわよ!」
「あらあら、皆さん元気ですわね」
「だから予算がぁぁぁ!」
五人の声が石畳の街に響き渡る。
バタバタと駆ける足音。弾む笑い声。からかい合う声。
それは、まるで音楽のようだった。
希望に満ちた、幸福の旋律。
路地裏で泣いていた少女たちが、今、希望に向かって駆け出している。
その賑やかな姿は陽の光を浴び、まるで新しい物語の始まりを祝福するかのように輝いていた。
それは、後にレオンが何度も思い出すことになる、大切な記憶の一つになったのだった。
◇
翌朝、冒険者ギルドの正面玄関――。
空気はまだ冷たく、石畳の朝露が昇りはじめた陽光を受けてダイヤモンドのように煌めいていた。
その輝きの中に、五つの影が静かに集う。
「お、おはよう……」
エリナが控えめに手を挙げた。
昨日、清水の舞台から飛び降りる覚悟で手に入れた新調の剣。その赤い鞘が朝日を受けて、まるで血のように妖しく輝いている。
腰に佩いた重みが、まだ少しだけ慣れない。
でも、この重みこそが、自分が前に進んだ証だと思えた。
「おはようございます、皆様」
ミーシャが、いつもの聖女の微笑みで会釈する。
だが、その空色の瞳の奥には、昨日までは確かになかったものが宿っていた。
それは、本物の期待。
小さな炎のように、静かに、でも確かに揺らめく光。
孤児院で過ごした日々、誰かに期待することなど、とうに諦めていた。
期待すれば、裏切られる。
だから、心の奥に蓋をして、聖女の仮面を被り続けてきた。
でも、今は違う。
この仲間となら、期待してもいいのかもしれない。
そう思える自分がいることが、少しだけ可笑しかった。
「お、おっはよーっ!」
ルナの声が、緊張で裏返った。
新しい杖を胸に抱きしめる姿は、まるで宝物を見せびらかしたくて仕方ない子供のよう。
この杖を手にした瞬間、魔法学院で初めて魔法を覚えた日のことを思い出した。
あの頃の自分は、純粋に魔法が好きだった。
火の精霊と語り合い、炎を操る喜びに胸を躍らせていた。
暴走事故を起こす前の、あの頃――。
でも、もう一度、あの頃に戻れるかもしれない。
この仲間となら、自分の力を、怖がらずに使えるかもしれない。
「ボクも来たよっ!」
シエルが、銀髪を朝風に靡かせながら駆け寄ってきた。
男装の凛々しさは変わらない。
でも、その碧眼に宿る光は、昨日までとは明らかに違っていた。
逃亡者の目ではない。
冒険者の目だ。
追われる者ではなく、追う者の目。
アステリア家の令嬢シエル・フォン・アステリアではなく、パーティ「アルカナ」の弓手シエルとして、新しい人生を歩み始めた者の目だった。
「よし、全員揃ったね」
レオンが、仲間たちを見回した。
その翠色の瞳に、深い感慨が宿る。
清水の舞台から飛び降りるかのような賑やかな装備新調を越えて今、彼女たちは新しい装備に身を包み、ここに立っている。
レオンは静かにうなずき、ギルドの扉に手をかけた。
重厚な樫の扉。
その向こうに、彼女たちの運命が待っている。
「今日から、伝説の始まりだ」
ギギギィ……と、重い扉が開いていく。
朝日が差し込み、五人の影が長く伸びた。
運命の歯車が、今、動き始める。
◇
朝のギルドホールは、いつもの喧騒に満ちていた。
依頼掲示板の前では、冒険者たちが良い案件を求めて押し合いへし合いしている。
「おい、その依頼は俺が先に見つけたんだ!」
「うるせえ、早い者勝ちだろうが!」
怒号と笑い声が入り混じり、朝から活気に溢れている。
レオンは、低ランク向けの掲示板に目を向けた。
指で羊皮紙をなぞりながら、依頼内容を確認していく。
薬草採取、報酬は銀貨五枚。
ゴブリン退治、報酬は金貨一枚。
荷物運搬、報酬は銀貨三枚。
どれも新人には相応しい、地味で安全な仕事だ。
しかし――。
レオンは、眉をひそめた。
なぜか、【運命鑑定】が沈黙している。
今までだったらこういう選択の場面で必ず何かしらの指針を示してくれたはずだ。
それなのに、今朝に限って、何の反応もない。
まるで、嵐の前の静けさのような、不気味な沈黙。
(どうしたんだ……?)
レオンは、その沈黙に不吉なものを感じていた。
カインたちといた頃には、こんな瞬間はなかったのだ。
いつも緊張していて、いつも気を遣っていて、心から笑うことなんてできなかった。
でも、今は違う。
今は、心の底から楽しい。
「ふふっ、待ちなさいな」
ミーシャも優雅な足取りで、でも驚く速さで後を追う。聖女の微笑みを浮かべながら。
「あたしが一番乗りよ!」
「ボクだって負けないんだから!」
「こら、走るなって! 転ぶわよ!」
「あらあら、皆さん元気ですわね」
「だから予算がぁぁぁ!」
五人の声が石畳の街に響き渡る。
バタバタと駆ける足音。弾む笑い声。からかい合う声。
それは、まるで音楽のようだった。
希望に満ちた、幸福の旋律。
路地裏で泣いていた少女たちが、今、希望に向かって駆け出している。
その賑やかな姿は陽の光を浴び、まるで新しい物語の始まりを祝福するかのように輝いていた。
それは、後にレオンが何度も思い出すことになる、大切な記憶の一つになったのだった。
◇
翌朝、冒険者ギルドの正面玄関――。
空気はまだ冷たく、石畳の朝露が昇りはじめた陽光を受けてダイヤモンドのように煌めいていた。
その輝きの中に、五つの影が静かに集う。
「お、おはよう……」
エリナが控えめに手を挙げた。
昨日、清水の舞台から飛び降りる覚悟で手に入れた新調の剣。その赤い鞘が朝日を受けて、まるで血のように妖しく輝いている。
腰に佩いた重みが、まだ少しだけ慣れない。
でも、この重みこそが、自分が前に進んだ証だと思えた。
「おはようございます、皆様」
ミーシャが、いつもの聖女の微笑みで会釈する。
だが、その空色の瞳の奥には、昨日までは確かになかったものが宿っていた。
それは、本物の期待。
小さな炎のように、静かに、でも確かに揺らめく光。
孤児院で過ごした日々、誰かに期待することなど、とうに諦めていた。
期待すれば、裏切られる。
だから、心の奥に蓋をして、聖女の仮面を被り続けてきた。
でも、今は違う。
この仲間となら、期待してもいいのかもしれない。
そう思える自分がいることが、少しだけ可笑しかった。
「お、おっはよーっ!」
ルナの声が、緊張で裏返った。
新しい杖を胸に抱きしめる姿は、まるで宝物を見せびらかしたくて仕方ない子供のよう。
この杖を手にした瞬間、魔法学院で初めて魔法を覚えた日のことを思い出した。
あの頃の自分は、純粋に魔法が好きだった。
火の精霊と語り合い、炎を操る喜びに胸を躍らせていた。
暴走事故を起こす前の、あの頃――。
でも、もう一度、あの頃に戻れるかもしれない。
この仲間となら、自分の力を、怖がらずに使えるかもしれない。
「ボクも来たよっ!」
シエルが、銀髪を朝風に靡かせながら駆け寄ってきた。
男装の凛々しさは変わらない。
でも、その碧眼に宿る光は、昨日までとは明らかに違っていた。
逃亡者の目ではない。
冒険者の目だ。
追われる者ではなく、追う者の目。
アステリア家の令嬢シエル・フォン・アステリアではなく、パーティ「アルカナ」の弓手シエルとして、新しい人生を歩み始めた者の目だった。
「よし、全員揃ったね」
レオンが、仲間たちを見回した。
その翠色の瞳に、深い感慨が宿る。
清水の舞台から飛び降りるかのような賑やかな装備新調を越えて今、彼女たちは新しい装備に身を包み、ここに立っている。
レオンは静かにうなずき、ギルドの扉に手をかけた。
重厚な樫の扉。
その向こうに、彼女たちの運命が待っている。
「今日から、伝説の始まりだ」
ギギギィ……と、重い扉が開いていく。
朝日が差し込み、五人の影が長く伸びた。
運命の歯車が、今、動き始める。
◇
朝のギルドホールは、いつもの喧騒に満ちていた。
依頼掲示板の前では、冒険者たちが良い案件を求めて押し合いへし合いしている。
「おい、その依頼は俺が先に見つけたんだ!」
「うるせえ、早い者勝ちだろうが!」
怒号と笑い声が入り混じり、朝から活気に溢れている。
レオンは、低ランク向けの掲示板に目を向けた。
指で羊皮紙をなぞりながら、依頼内容を確認していく。
薬草採取、報酬は銀貨五枚。
ゴブリン退治、報酬は金貨一枚。
荷物運搬、報酬は銀貨三枚。
どれも新人には相応しい、地味で安全な仕事だ。
しかし――。
レオンは、眉をひそめた。
なぜか、【運命鑑定】が沈黙している。
今までだったらこういう選択の場面で必ず何かしらの指針を示してくれたはずだ。
それなのに、今朝に限って、何の反応もない。
まるで、嵐の前の静けさのような、不気味な沈黙。
(どうしたんだ……?)
レオンは、その沈黙に不吉なものを感じていた。