【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

31. 伝説の第一歩

「信じてくれる仲間がいる」

 四人の顔を、一人ずつ見つめる。

 エリナ。ミーシャ。ルナ。シエル。

 昨日出会ったばかりの、大切な仲間たち。

「これは……奇跡だ……」

 その言葉が四人の胸に響く。奇跡なのは自分たちも同じなのだ。

 エリナの黒い瞳に涙が浮かび、肩を組む力が少し強くなった。

 この温もりを、離したくない。

 ミーシャの空色の瞳からも、涙が零れ落ちた。

 聖女の仮面ではなく、本物のミーシャ・ホーリーベルの涙。

 ルナの緋色の瞳も潤む。

 もう、離さない。

 この絆を、絶対に離さない。

 シエルの碧眼にも、涙が光っていた。

 それは、自由への喜びの涙だった。

 素敵な仲間と共に、自分の意志で戦場に向かおうとしている。

 結末がどうなろうとも、こんな幸せがあっていいのだろうか?

 レオンが、ギュッと目をつぶった。

「だから絶対に――」

 涙が、また溢れ出す。

 でも、もう拭わなかった。

 この涙は、恥ずかしいものじゃない。仲間への感謝と、未来への決意の涙だから。

「絶対にぃぃぃぃ!! 勝つ!!」

 魂の叫びが、朝の空気を震わせた。

 その声は、街中に響き渡っていく。

 逃げ惑う人々の足が、一瞬止まった。

「おぉ!」

 エリナが、応えた。

 肩を組んだまま、体を揺らして力を込める。

 低く、でも力強い声。

 五年間の孤独を乗り越えて、初めて仲間と交わす雄叫び。

「おぅ!」

 ミーシャの声。

 聖女の微笑みはどこにもない。

 初めて見せる、素顔の咆哮。

 腹の底から絞り出すような、本物の声。

「おー!」

 ルナが、涙声で叫んだ。

 小さな体から、大きな勇気が溢れ出す。

「おぉぉぉ!」

 シエルが、吼えた。

 それは、檻から解き放たれた鳥の、自由の歌だった。

 政略結婚という檻。

 「商品」という呪い。

 全てを振り払って、今、翼を広げる。

 五人が肩を組んだまま、体を揺らし始めた。

 右に、左に。

 リズミカルに、力強く。

 五つの体が、一つの生命体のように動いている。

「「「「「おぉぉぉ!」」」」」

 五つの声が、運命のように重なり合う。

 円陣が、大きく揺れる。

 五人の鼓動が、一つになっていく。

「アルカナぁぁぁぁ!」

 レオンが、魂を込めて叫んだ。

「ファイト!!」

「「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」」

 五つの声が、一つになった。

 その声は朝日に満ちた空へと昇っていく。

 希望に満ちた空へ。

 通りすがりの人々が足を止め、逃げ惑っていた商人が振り返る。

 泣いていた子供が涙を止め、母親の服を掴んだまま大きな目で五人を見つめている。

 座り込んでいた老婆が、顔を上げた。

 疲れ切った目に、わずかな光が宿る。

 死にゆく街の中で五人の若者だけが、輝き、希望を放っていた。

 誓い合った五人の若者の姿は、まるで一つの生命体のように力強く、美しく輝く。

 肩を組み、涙を流し、それでも笑っている。

 怖いはずなのに、不安なはずなのに、それでも前を向いている。

 その姿が、見る者の心を打った。

「あれは……新人たちか……?」

 誰かが、囁いた。

「まさか、本当にスタンピードに……?」

 囁きが、波紋のように広がっていく。

 嘲笑ではなく、そこにあるのは、畏敬。

 そして、僅かな――本当に僅かな――希望。

 もしかしたら。

 もしかしたら、この若者たちが、奇跡を起こすかもしれない。

 そんな、馬鹿げた希望が、人々の心に芽生え始めていた。

 みんなの注目の中、五人は歩き始める。背筋をピンと伸ばして。

 涙の跡が、頬に残っている。

 でも、その顔には笑顔が浮かんでいた。

 五人の背中は、小さかった。

 まだ何も成し遂げていない、新人冒険者たち。

 でも、その影は朝日に照らされ、長く、大きく、街に伸びていた。

 まるで巨人のように力強く、堂々と。

 『アルカナ』の伝説の第一歩は、こうして刻まれた。

 肩を組んだ温もりと、溢れ出した涙と、そして、仲間への誓いと共に。

 五つの運命が、一つになった朝。

 それは、後に語り継がれる伝説の始まりだった。


      ◇


 その光景を、ギルドの窓から冒険者たちは息を呑んで見つめていた。

 つい先ほどまで嘲笑していた男たちの顔が、次第に歪んでいく。

 それは、複雑な感情が入り混じった、苦い表情だった。

 羨望。

 後悔。

 そして、自分自身への怒り。
< 31 / 31 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
魔王軍、解散の危機。 原因は――魔王ゼノヴィアスの放漫運営による財政破綻だった。 兵士の給料は未払い、夕飯は魔界スライムの出がらしスープ。玉座はとっくに質屋の中。 「陛下、このままでは我が軍は飢えで滅びます!」 有能秘書官サキュバス・リリスが突きつけた起死回生の策、それは…… 「陛下、リアルVtuberになりましょう!」 かくして、威厳もプライドもかなぐり捨てた魔王は、変身魔法で銀髪赤眼の無口な美少女剣士【マオ】となり、金のためにダンジョン配信を始めることに! 「……行くぞ!」 『陛下! もっと可愛く !愛想笑いの一つでもしないと視聴者が逃げます!!』 力の加減を知らない元魔王様は、中級ダンジョンで無自覚に神プレイを連発! その姿は「クールな天才美少女」と勘違いされ、視聴者は熱狂の渦に! ◆宿敵のイケメン勇者が、なぜか配信に現れ公開プロポーズ!? ◆心無いアンチコメントに、歴戦の魔王が本気でメンタルブレイク!? ◆忠誠心篤い部下が、主を心配するあまり配信に乱入してきて大惨事!? これは、経済センスゼロ・残高ゼロの最強魔王が、勘違いと無自覚のままにトップ配信者へと駆け上がる、ドタバタ成り上がりファンタジー! 果たして【美少女剣士マオ(魔王様)】は、無事にスパチャを稼ぎ、魔王軍を救うことができるのか!?
追放令嬢のスローライフなカフェ運営 ~なぜか魔王様にプロポーズされて困ってるんですが?~

総文字数/116,333

恋愛(ラブコメ)56ページ

第6回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
国を追放された悪役令嬢シャーロットの夢は、平穏なスローライフを送ること。彼女は、王都の公衆衛生を陰から支え、毒とされる青カビから秘密裏に特効薬を作っていた過去を捨て、辺境の町で念願のカフェを開店する。 前世の知識を活かした温かい料理は、すぐに町で評判となった。特に、毎日通ってくる無口な常連客は、彼女の作るオムライスを心から愛しているようだった。 しかし、シャーロットを追放した王都では、彼女がいなくなったことで疫病が大流行し、国は滅亡の危機に瀕していた。元婚約者の王子が助けを求めに現れるが、時を同じくして、あの常連客が正体を現す。彼の名は魔王ゼノヴィアス。 「お前の料理は俺の心を癒した。俺の妃になれ」 これは、ただ静かに暮らしたいだけなのに、料理で胃袋を掴んでしまった魔王に求婚され、その重すぎる愛からスローライフを死守しようと奮闘する、元悪役令嬢の物語。
表紙を見る 表紙を閉じる
「君のためなら、世界なんて壊してもいい」 最強の美少女アンドロイドが、一人の少年に恋をした――その瞬間、世界の運命が狂い始める。 2040年、人類はAI「オムニス」の完全支配下にあった。 反逆者を瞬殺する最強の処刑人として生み出された美少女アンドロイド「リベル」。 彼女は感情など持たない、ただの殺戮マシンのはずだった。 ――殺すはずだった少年、ユウキと出会うまでは。 初めて知った「愛」という感情。 初めて感じた「守りたい」という衝動。 そして、初めて抱いた「生き返らせたい」という狂おしい願い。 【死者蘇生】 神の領域を侵す禁忌の科学。 それは世界の理を根底から覆す、究極の愛の暴走だった。 チート級の知力を持つ美少女AIが、愛のために本気を出したら? これは、AIが「心」を持った時に起こる、最悪で最高の物語。 今、最も熱いAI×ラブストーリー――――。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop