僕と影と猫娘
「もうすぐ僕の誕生日なんだよ」
「何歳になるの?」
この頃には猫娘はすっかり僕と同じように喋るようになっていた。
「十歳」
「十歳?」
猫娘はぽかんとした顔で僕を見た。
この日は、空き地に僕と猫娘の二人きりで、あとは影が足元でゆらゆらしているだけだった。
「十歳になるの?」
「どうしたの?」
「にんげん、十歳になると、あたしたちと遊んでくれなくなるって」
「そうなの? だれに聞いたの?」
「猫集会で、猫夜叉が」
「ねこやしゃ?」
『猫の妖怪だな』
影が言った。
「ふうん。でも僕は明日も明後日も、君に会いに来るつもりだけど」
「ちょっとずつ、見えなくなっちゃうんだって」
「そんなことないよ。僕の父さんは君が見えてるし」
「でも、でも……!」
猫娘がバッと僕を見上げた。
その瞳は涙でいっぱいで、僕は何も言えなかった。
「行かないで」
小さな手が僕の腕を掴んだ。尖った爪が食い込む。
「あと二時間くらいはここにいるよ」
「ずっと、あたしといてよ。あなたがいないと、さびしいの」
「ずっとってわけには」
「……また、会えなくなっちゃうの?」
猫娘の耳が、ぺたっと伏せられた。
影がぶるりと震えて、僕と猫娘の間に入ろうとしたけど、間に合わなかった。
「行かないで、行かないで。あなたがいないと、さびしいの」
「えっ、あ……っ」
僕は、どろりとした何かに飲み込まれた。
「何歳になるの?」
この頃には猫娘はすっかり僕と同じように喋るようになっていた。
「十歳」
「十歳?」
猫娘はぽかんとした顔で僕を見た。
この日は、空き地に僕と猫娘の二人きりで、あとは影が足元でゆらゆらしているだけだった。
「十歳になるの?」
「どうしたの?」
「にんげん、十歳になると、あたしたちと遊んでくれなくなるって」
「そうなの? だれに聞いたの?」
「猫集会で、猫夜叉が」
「ねこやしゃ?」
『猫の妖怪だな』
影が言った。
「ふうん。でも僕は明日も明後日も、君に会いに来るつもりだけど」
「ちょっとずつ、見えなくなっちゃうんだって」
「そんなことないよ。僕の父さんは君が見えてるし」
「でも、でも……!」
猫娘がバッと僕を見上げた。
その瞳は涙でいっぱいで、僕は何も言えなかった。
「行かないで」
小さな手が僕の腕を掴んだ。尖った爪が食い込む。
「あと二時間くらいはここにいるよ」
「ずっと、あたしといてよ。あなたがいないと、さびしいの」
「ずっとってわけには」
「……また、会えなくなっちゃうの?」
猫娘の耳が、ぺたっと伏せられた。
影がぶるりと震えて、僕と猫娘の間に入ろうとしたけど、間に合わなかった。
「行かないで、行かないで。あなたがいないと、さびしいの」
「えっ、あ……っ」
僕は、どろりとした何かに飲み込まれた。