(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
高校二年生・三月*春一番と雨一番
 ガタガタと、窓をたたく強風がやかましい。
 火曜日の四時間目の漢文の授業だけど、窓際の席の私は先生の声でなく風の音をきいていた。
 漢文の授業はほとんど先週の復習なので、ちょっと飽き飽きしていた。そのせいで、普段と違う風の音が気になって仕方がなかったのだった。

 本日の天気はくもり。雨の予報ではない。しかし、強風注意報が出ている。
 その注意報を裏切ることなく、今の風はまるで台風のよう。校舎外の木々の枝を揺らし、建物の隙間に入り込んでは化け物の遠吠えのような轟音を響かせる。今の時刻が昼だから、その奇声の正体が風だとわかるが、これが夜ならさぞかし薄気味悪いだろう。

 (すごい風!)
 (あの細い木、折れそう!)
 (体育の授業でなくて、よかった~)

 安全でぬくぬくの教室にいるからいいものの、そんなのんきな感想を得る。
 もしこれが温かい風であれば、「春一番」になるかなと思う。
 しかし今は二月末。この時期の高校は三年生が自由登校となり、校内には一年生と二年生しかいない。一年で一番閑散とした月の学校であれば、人恋しさゆえに冷たいものよりも温かいものを求めてしまう。
 だが、その「春一番」が吹いてしまうと私たちは三年生。正真正銘の受験生となる。
 大学受験――思春期の私たちに課せられた人生最大といっていい試練がやってくるのである。


pagetop