(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
高校三年生・卒業*三月の夜宴
 それは、ゆかりんのささやかなひと言からはじまった。

 「ねぇねぇねぇ、むっちゃんのところって、どうなっているの?」

 とある二月も終わりの頃、私たちは学校の中庭で高校三年生最後のお弁当を食べていた。天気もポカポカ陽気で高校生活も最後となれば、私たち以外にも教室から出てきている生徒がいた。
 「どうって? 何が?」
 「日高くんとのことよ。日高っち東京進学なんでしょ? 遠距離恋愛するの?」
 私と日高くんは付き合っているわけではない。なのに遠距離恋愛といわれて、危うく私はお弁当の卵焼きがのどに詰まりそうになった。

 「わかりやすいね」
 ズバリのゆかりんの指摘に、ますます私は赤くなる。いろいろな意味で。
 「傍からみていたら面白いわ」
 「もう、むっちゃんったら、ホントかっわいい」
 ゆかりんをはじめとして、ちーも、あっつんも私のことを弄りはじめる。
 傍観者にすれば、恋の行方など、この上もなく楽しいエンターテインメントだ。

 高校最後の昼休みを楽しんでいた私は、突然の追及に恥じらうばかり。だって、日高くんとはただの学校の人なのだ。 
 (え、どうって、どうもしてないよ)
 心の中で、必死になって反論する。卵焼きがまだ口の中に残っていて、言葉にできない。
 日高くんとは、二年生のときのクラスメイトである。
 彼とはちょうど一年前に、期間限定イチゴパフェを食べた。確か風の強い日に、ふたりきりでパフェを食べたのだが、それだけである。
 これは、ここにいるメンバーは誰も知らないはず。それに彼とは、三年生では別のクラスになってしまった。
 
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