(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 ――えー、事情はわかるけれど、私だってはじめてのことで、なんでもOKってわけじゃないから!
 ――それは、僕も同じ。兼任しておきながらいうのも変だけど。
 ――できる範囲で手伝うけど、できなかったら?
 ――もともとは僕の仕事だから、僕が謝ればいいだけさ。白井さんは関係ないよ。

 あくまでも手が足りないときの補助としてのお願いであった。

 ――ということで、別のアドレス交換しよ!
 ――グループので、直のダイレクトメールでいいよ。
 ――でも、うっかりグループのほうに流れたら、おおごとじゃん。要らん詮索されても困るだろうし。

 要らない詮索とは、『白井と日高が付き合っている』ということだろう。
 そうなればいいなと思いながらも、そうなっていないのにそれが先に噂になってしまうのは……どういったらいいのだろう、もどかしいというのだろうか。
 素直になれない私がいて、「じゃあ、もういっそ、付き合おうよ!」ともいえない私もいる。

 (アドレス交換しちゃったよ! プライベートなアドレス、知っちゃたよ!)
 (これって、委員会活動でも内緒の行動をすることになったってこと?)
 (パフェのときみたいなことを、また期待しちゃう!)

 そのアドレスは日高くんの共犯者全員に知らされたものだとしても、その人数はすごく少ないはず。そして、大部分が男子のアドレスの中に、女子は私だけのはず。
 だって、日高くんはカノジョはいないっていっていたから。

 思い切って行動して、予想外の収穫を得た新学期初日であった。
 幸先のいい三年生のスタートである。
 がっかりしたクラス替えだったが、別のクラスになることで日高くんとはもっと太い縁ができたのだ。
 約半年の卒業アルバム委員活動、頑張ろうと密かに私は決めたのだった。



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