(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 †††


 「ホントに、ま~だ吹いてるよ。困ったもんだ」

 ホームルームが終わり、昇降口にて外を確認する。
 轟々とうるさい風は、開けっ放しの昇降口扉から下駄箱まで遠慮なく吹き込んでいた。おかげでローファーがうっすらと土埃をかぶり、艶が半減していた。

 「電車とは関係なしに、こんな日はさっさと帰るに限る!」
 
 知らず知らずのうちに私たちは急ぎ足になっていた。最寄り駅までの十五分、おしゃべりをしようものなら口の中が砂でざらざらになる。無言で駅までたどり着けば、これまた無言で目を目配せしてそれぞれの改札口を抜けていった。
 ポツンと、私ひとりが改札口前に残る。なぜなら私は電車通学でなくバス通学をしているから。
 そのつもりで家を出てきたので、「お疲れ様会」がなくなって時間を持て余していた。

 (せっかくだから、駅ビルでも覗いていくか)
 (いつもバスの時間、ギリギリだし、ね)
 (手始めに……)

 クラスメートには悪いが、ひとりで駅ビルを散策する機会ができて少し嬉しい。女四人組の行動はそれはそれで楽しいのだが、たまにはひとり好き勝手に行動したくなる。
 まずは本屋かな、推しの写真集が入っているはずと、踵を返したときだった。

 「白井さん、ひとり? どう、パフェ食べない?」
 「?」

 私の名を呼び、誘う声がする。声に振り向けば、同じクラスの日高くんであった。

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