(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 彼はいう、引っ越し作業中にスマホが落ちて、車で引きつぶされてしまったと。引っ越しの手続きですぐにスマホが必要だったから、番号付きの店頭在庫機種になってしまったと。
 見せられたスマホはピカピカで、私の知らない日高くんのものであった。
 「白井さんとつながっておけば、自動的に卒アル委員とは連絡、取れるっしょ」
 真新しいスマホナンバーが私だけのものかと思いきや、私から先の繋がりを期待してのアドレス交換要請であった。

 事情を知れば、また複雑な気分になる。私目当てではない、でも私なら信頼できる。これも上等だと思えた。
 「そういうことなら、いいよ」
 「ありがとう。さすが、白井さんだ」
 何が「さすが」なのか意味不明だが、卒アル委員会初日の下校時と同じようにアドレスを交換した。
 「あ、電車きた! じゃあまた、連絡するよ」
 日高くんは用件が終われば、さっさと改札を抜けていく。フットワークの軽さは、高校を卒業しても健在であった。

 ぽつんと私がひとり残される。
 (これって、さぁ~)
 (もしかして、ちょっと特別なの?)
 (もちろん、高校時代の知り合い枠でしかないかもしれないけど)
 今度こそ、日高くんのアドレスを知る人間はかなり限られる。
 大学へいけばまた新しい出会いがあって、あのスカスカのスマホにどんどんアドレスが追加されていくだろう。私のアドレスはすぐに埋没してしまうに違いない。
 それでも、私の名前が最初のほうの登録者であるには変わりない。
 (連絡するって、いっていたけど……)
 (卒アル委員会では、一回もこなかったしね)
 (期待しないおきましょう!)
 帰りのバスの中で何度も新しい追加フレンドのアドレスを見返して、私は帰宅したのだった。


pagetop