(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 (都会では大丈夫でも、ここは田舎だもんな~)
 (無理もないか~)

 日高くんの望みが、ひどく理解できた。誰だって美味しそうなものは気になるし、食べてみたい。
 幸いにも、仲良しグループメンバーは電車に乗って帰ってしまった。短縮授業の今日は、他校生の姿もない。そう、極めて高校生という人種の目が少ない日なのである。

 (それに……)
 (私に、日高くんと付き合っているなんて噂が……立つことはないか)

 正面にいる日高くんを頭のてっぺんからつま先までじっくりとみる。
 中肉中背の学ラン姿、黒の四角いデイバックに紺のスニーカーという、ごくごく普通の、いや模範的な服装の高校男子がいる。
 どうしようかなぁ~と思っていたら、早急に彼は訴えてきた。

 「ダメ? 何なら、バイト代ということでパフェ奢るけど」
 「え?」

 あのパフェは、イチゴをたっぷりと使ったものであれば、お値段だってそれに相応しいもの。高校生が奢るというには、缶ジュースなんかと違い少々引けてしまう。

 「それは、いいよ。高いから」
 「じゃあ、オマケをつけるよ」
 「オマケも、いいよ。あのパフェだけでもお腹いっぱいになるから」
 「でもそれじゃあ、俺の気が済まない。あ、そうだ、オミヤにしよう!」

 会話の方向が、ふたりでパフェを食べにいくという流れに固まっていた。
 え、え、え! という間に、私は日高くんに連れられて、カフェの席についていたのだった。


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