窓明かりの群れに揺れる
 それから、何度かデートを重ねた。

 映画館で、暗闇の中そっと指先が絡んだ夜。

 会社帰りにふらりと入ったラーメン屋で、
 くだらない話で涙が出るほど笑った夜。

 キスは、あの海の日から少しずつ、
 自然に増えていった。

 エレベーターの中で短く。
 駅のホームで、電車が入ってくる直前に。

 別れ際の「おやすみ」に重なるように。

 そのたびに春奈は、
 胸のどこかがふわりと浮くような感覚と、
 足元からじんわり温かくなっていく感覚を、
 ちょっと照れながら受け止めてきた。
 (この人といるときの自分、嫌いじゃないな)

 そう思える時間が、少しずつ増えていった。
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