窓明かりの群れに揺れる
駅までの道を並んで歩きながら、
他愛もない話題をつないでいく。
夕方より少し冷たくなった風が、
頬を撫でる。
さっきまで重なっていた唇の感触が、
まだ残っていて、
何を答えるにも一拍遅れてしまう。
改札の前で、足を止める。
「送ってもらってありがとうございます」
「また、ご飯行こうな」
「はい」
言葉は、それだけ。
それなのに、
胸の奥に残る温度は、
なかなか下がってくれなかった。
電車に乗り込み、
窓際の席に腰を下ろす。
ガラスに映る自分の顔は、
少し火照っていて、
いつもより幼くも、
大人びても見える不思議な表情だった。
(……さっき、断っちゃった)
胸の奥に残っているのは、
「ほっとした安心感」だけじゃない。
あのまま流れに任せてしまって
よかったのか、
それとも、まだ早すぎたのか――
自分でもうまく言葉にできない、
不安と迷いが入り混じっている。
(すべてを許すには、
まだ自分の気持ちが追いついてない)
そう思う一方で、
さっきのキスを思い出すと、
心のどこかが、
静かにほどけていくのも感じていた。
仕事でつまずいたときに、
何気なくかけてくれる一言。
緊張しているときに、
さりげなく笑わせてくれるタイミング。
(……少しずつなら、
この人を信じていっても
いいのかもしれない)
そんな気持ちが、
胸の奥でほんの少しだけ芽を
出し始めている。
窓の外、
夜の街がゆっくりと流れていくのを
見ながら、
春奈は、自分の指先に残るぬくもりを
そっと確かめるように握りしめた。
春奈はうすうす自覚していた。
それでも、
日々はそれなりに平穏に流れていった。
恵は、
いつものように冗談ばかり言いながら、
フロアの空気を明るくしていた。
一時期、
少し元気がないように見えた時期も
あったけれど、
今はほとんど、以前と変わらない。
直樹も加わっての飲み会。
ふざけ合うランチタイム。
そんな時間が、
春奈にとっても「生活の一部」になっていた。
他愛もない話題をつないでいく。
夕方より少し冷たくなった風が、
頬を撫でる。
さっきまで重なっていた唇の感触が、
まだ残っていて、
何を答えるにも一拍遅れてしまう。
改札の前で、足を止める。
「送ってもらってありがとうございます」
「また、ご飯行こうな」
「はい」
言葉は、それだけ。
それなのに、
胸の奥に残る温度は、
なかなか下がってくれなかった。
電車に乗り込み、
窓際の席に腰を下ろす。
ガラスに映る自分の顔は、
少し火照っていて、
いつもより幼くも、
大人びても見える不思議な表情だった。
(……さっき、断っちゃった)
胸の奥に残っているのは、
「ほっとした安心感」だけじゃない。
あのまま流れに任せてしまって
よかったのか、
それとも、まだ早すぎたのか――
自分でもうまく言葉にできない、
不安と迷いが入り混じっている。
(すべてを許すには、
まだ自分の気持ちが追いついてない)
そう思う一方で、
さっきのキスを思い出すと、
心のどこかが、
静かにほどけていくのも感じていた。
仕事でつまずいたときに、
何気なくかけてくれる一言。
緊張しているときに、
さりげなく笑わせてくれるタイミング。
(……少しずつなら、
この人を信じていっても
いいのかもしれない)
そんな気持ちが、
胸の奥でほんの少しだけ芽を
出し始めている。
窓の外、
夜の街がゆっくりと流れていくのを
見ながら、
春奈は、自分の指先に残るぬくもりを
そっと確かめるように握りしめた。
春奈はうすうす自覚していた。
それでも、
日々はそれなりに平穏に流れていった。
恵は、
いつものように冗談ばかり言いながら、
フロアの空気を明るくしていた。
一時期、
少し元気がないように見えた時期も
あったけれど、
今はほとんど、以前と変わらない。
直樹も加わっての飲み会。
ふざけ合うランチタイム。
そんな時間が、
春奈にとっても「生活の一部」になっていた。