これはもはや事故です!

なんで、私が……。

「さむっ」

 週末の深夜0時過ぎ、木枯らしが体温を攫って行く。
 高原美羽は、ダウンコートの襟元を締め直し、誕生日に自分で買ったお気に入りのヒールをコツコツと鳴らしながら、足早に進んでいた。

「やっぱ、タクシーで帰ればよかった。失敗したぁ」

 駅から自宅マンションまで徒歩15分の距離。昼間はそれなりに人通りもあるけれど、この時間になると、かなり寂しい。
 それに最近は物騒だから、ちょっと不安だ。

 高校時代から25歳になる今日まで10年来の親友の優佳と、楽しく飲んでいた。
 最近観たドラマや、お気に入りのアニメの話題で、久しぶりの女子会は時間を忘れるほど盛り上り、気がつけば、すっかり遅い時間になってしまった。
 こんな事なら、優佳の家に泊めてもらえば良かったと、いまさら後悔してしまう美羽だった。
住宅街に響く足音、所々にある街灯の仄かな明かりが、余計に不安を煽られる。

「あー、早くお風呂につかりたい」

 そう、声に出し、角を曲がった瞬間。
 少し甲高い声が耳に飛び込んできた。

「あんた、誠さんと、どういう関係なのよ!」

「そう言うあんたこそ、関係ないじゃない!さっさと帰れば!?」

 二人の女が、男を取り合っていたのだ。

 (うわー!サイテー)

 
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