これはもはや事故です!
 この道通らないと家に帰れないのに、道の真ん中でキャットファイトが始まっちゃったのだ。

(三角関係の痴話喧嘩なんて、よそでやって欲しい)
そう心の中で美羽はぼやいた。

「まあまあ、二人とも落ち着いて」
 そんな事を言う男に、女たちはヒートアップのご様子だ。

「この状態で落ち着いていられるわけないでしょ」

「そうよ! 私か、この女か、ハッキリしてよ!」

 女二人に詰め寄られた男性。
 その背中しか見えないけれど、うんざりした様子が伝わってきた。

「俺は付き合うなんて、一度も言ってないよ。その上、二人とも俺に脈がないと分かると、他に好きな人が出来たって──」

「あの時は!……でも、やっぱり誠さんが良いなって」

「そうよ。ちょっと間違えたのよ」

男性の肩が上下して、大きなため息をついたようだ。

「今更だよね。それに、今、好きな人がいるんだ。だから、俺に構わないでくれ」

優し気に語ってるように聞こえるが、有無を言わせない妙な圧がある。
二人の女性は、ショックを受けたように後退りした。

「そんな……あんなに親身になって話しを聞いてくれたじゃない。私のことが好きだったんでしょう?」

「は!? 誠さんが、あんたに優しくしたのって、仕事で仕方なくに決まってるでしょ!私なんて、誠さんから食事に誘われて、レストランに行ったんだから」

「何よ。あんたこそ、勘違いしないでよ。どうせ、その席には、他の人もいたんでしょ!」

(あ~、もう、まだまだ終わりそうもない。どうする?)
 道を戻って大回りしても、外人が溜まってるコンビニの前通らないと帰れない。
そんなとこ通るのめっちゃ怖い。
だから、この道で帰りたいんだけど……。
 だいたい二股サイテー男が、この場を収めるのが筋なのだ。
(まあ、私には関係ないし、知らん顔して、横を通り過ぎちゃおう)

とは、思った美羽だったが、高まる好奇心が抑え切れずに、真横まで来た時、つい揉めている3人に目がいってしまう。

「あっ!」
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