これはもはや事故です!

大怪我だよ!

(恋愛マンガのようなこの距離感に……頭が沸騰しそう)
 
 磯崎の腕の中で、混乱した美羽は余計な事をしゃべりだした。

「あの、磯崎さん。私が働いているカフェのお客様でいらしてくださっていますよね。いつもご利用ありがとうございます。コーヒーお好きなんですね」

 すると、磯崎は驚いたように目を見開き、優しく微笑んだ。

「ああ、いつも美味しいコーヒーを頂いているよ」

 耳元で聞こえるバリトンボイスが、甘く心に響く。
 その声に当てられて、あわあわとしているうちに、名前を呼ばれる。

「あ、診察に行ってきます」

「痛くて、歩けないだろう?」

 そう言って、美羽を抱えたまま、磯崎が立ち上がる。

「えっ!?」

 美羽は、磯崎に運ばれながら、診察室に入ると、白い壁と蛍光灯の光が痛いほど明るい。おまけに、カーテンが空調のせいで、ゆらゆらと揺れていた。その先にある、診察用のベッドに案内された。

医師や看護師さんの視線が、磯崎の腕から降ろされている美羽に集まる。

(なんだか、とっても恥ずかしい……。)

「はい、触りますよ」

 医師が私の足首を軽く押した瞬間、反射的に体が跳ねる。

「っ……!」

 鈍い痛みが足首からふくらはぎへ鋭く走り、思わず息が止まった。

「あー、だいぶ腫れてるね。レントゲン撮って骨折してないか、確認しましょう」

 医師から言われた骨折の可能性。
 とたんに美羽は不安でいっぱいになり、ポツリとつぶやいた。
 
「ひとり暮らしなのに、折れてたらどうしよう……」
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