これはもはや事故です!

俺の部屋に美羽さんが……

 玄関の扉が静かに閉まった瞬間、美羽の細い肩がぴくりと震えたことに磯崎は気づいた。

 警戒している。
 それは当然だ。

(……怖いよな。良く知らない男の家に来るなんて、分かっている。
 彼女が今、どれだけ不安でいっぱいか。
 だからこそ、絶対に誤解されたくなかった。
 俺はただ、彼女を守りたいだけだ。)

 足を痛めて、怯えた顔でタクシーに乗り込んだ美羽を見た瞬間、胸がひどくざわついた。

(怪我をさせた原因は俺だ。……やっぱり、責任を取りたい。放っておくなんて無理だ)

 美羽に対する想い。
それは、今日突然湧いた感情じゃない。
 半年以上前からずっと、心に居座っていたものだ。

 ビルの1階のカフェ。
 仕事に向かう朝、疲れた夕方。
 何度その店に通っただろう。

 忙しい時も丁寧に「ありがとうございました」と言って頭を下げる彼女を見て、知らないうちに視線が追っていた。

 目立つタイプじゃない。
 派手でもない。
 なのに、妙に気になる。

(なんでだろうな……。あの子の声を聞くと、仕事の疲れが少しだけ軽くなった)

 ただの『お気に入りの店員』だと自分に言い聞かせていた。
 手書きのネープレートに書かれた『美羽』という名前以外、何も知らないくせに、いつの間にか、気にするようになっていた。
 彼女の笑顔が見たくて、店に通う日々。
 やわらかな声を聴くだけで、満足だった。

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