これはもはや事故です!
(……あの時、俺が二人を毅然と追い返していれば、美羽さんが巻き込まれることなんて、なかったはずだ)

 それは、誰よりも磯崎自身が分かっていた。
 
(完全に俺の判断ミスだ。……ごめん)

 ケガをした美羽を見た瞬間、胸が潰れるほど後悔した。

 もし、あの女がもっと強く彼女を突き飛ばしていら。
 もし、車道に倒れていたら。

想像するだけで、背筋が寒くなり、美羽を抱き上げた腕に力が籠る。

 そして、心の奥底に燻っていた気持ちが、露わになった今、磯崎にとって、彼女は、ただのカフェの店員じゃなくなっていた。

(ずっと前から……だからこそ、責任は全部俺が取る。せめて、今日だけでも……頼ってくれれば)

 
 今はただ、彼女の不安を少しでも取り除くことだけが、役目だと磯崎は強く思った。
腕の中で小さく体を縮めている美羽は、あの修羅場のせいだけじゃなく、自分に対しても怯えているのだと分かっていた。

 それが胸に刺さる。

「そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ」

「し、してません!」

「嘘つき」

 注意深く怖がらせないように優しく話しかけると、美羽はわずかに肩の力を抜いた。

(……大丈夫。ゆっくりでいい)

「うち、散らかしてないから安心して」

「そういう問題じゃ……」

「大丈夫。君のことはちゃんと責任とる」

 その言葉に、美羽は息を飲み視線を泳がせる。
ゆっくり照明をつけると、暖色の光が室内にやわらかく広がった。
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