これはもはや事故です!
「さっきも言ったが、無理はしないでいい。痛かったら、すぐ言ってほしい」

「……はい、わかりました」

 か細い返事。
 普段カフェで聞く声より、ずっと弱く聞こえる。

(……怖がらせてる。俺のせいで)

 胸の奥にじわりと悔しさが広がった。

 だが、ここで言い訳をしても仕方がない。
 まずは、彼女が安心できる空間を整えることが先だった。

「美羽さん」

「……はい?」

「俺は君が嫌がるようなことは、絶対にしない。だから……少しだけ、俺を信じてほしい」

 そう口にしてから、磯崎はふと気づいた。

 少しだけなんて、本当は嘘だ。

 本当はもっと信じてほしい。
 もっと近くにいてほしい。
 そんな感情が自分の中で湧き出している。

 だが、彼女はまだ怯えている。
 これ以上、押したらいけない。

 美羽はぎこちなく頷いた。
 その小さな動きが、やけに愛おしく見えた。

「……まずは足を休めよう。氷を替えてくる」

 そう言って磯崎は、自分の気持ちを隠すようにキッチンへ向かう。
 背中に彼女の視線を感じ、思わず苦笑が漏れた。

(……俺の動きをちゃんと見てるんだな)

 

 
< 21 / 132 >

この作品をシェア

pagetop