これはもはや事故です!

磯崎さんの部屋です。

 部屋の暖房が効いてきて、美羽の張りつめていた緊張が一気にほどけ、身体から力が抜けた。
 でも、心はまったく落ち着かない。

(どうしよう……この状況、いろいろ無理じゃない……?
 なんで私、磯崎さんの家に来ちゃったんだろう。)

 磯崎の家。
 しかも、修羅場の真ん中にいた張本人の。
 確かに怪我は痛むし、一人で帰るのは無理だった。
 けれど……。
 それでも、あまりにも軽率な行動だった。

(私、本当に……大丈夫なのかな……)

 そんな不安のせいか、落ち着きなくまわりを見回してしまう。
 自分の部屋の倍はありそうな広いリビング、大きな窓。
 誰もが理想に思うような素敵な部屋。
美羽は、ほぅっと息をはく。
 すると、部屋の主の磯崎が、ソファーの横で膝をつき、心配そうに眉尻を下げる。
意外なほどの磯崎の世話焼きっぷりに美羽は、瞳を瞬かせた。

美羽が同僚から聴いた噂では、磯崎は、遊び人の女たらし。
 今日の修羅場はその証拠みたいなものだった。
 なのに、目の前の磯崎は、そんな噂とは全然違う。

(優しい……とかじゃなくて、なんか……真剣な目で……)

 それが、怖い。
 でも、安心もする。
 その二つが胸の中でぐちゃぐちゃに混ざって、美羽はどうしたらいいのか分からなかった。
 
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