これはもはや事故です!
 磯崎の腕は驚くほど温かくて、しっかり包み込むように美羽を支えていた。

(ち、近い……!っていうか、抱きしめられてる……!?)

「……ご、ごめんなさい……!」

「謝らなくていい。本当に倒れたら困るから」

 磯崎の顔がすぐそこにある。
 息がかかるほど近い。

 離れたいのに離れられない体勢。美羽は、はわわっと焦ってしまう。

(だめ……こんなの……心臓もたない……)

「ほら、ゆっくり。手、ここに置いて」

 磯崎が美羽の手を、自分の腕の上にそっと乗せた。
 そのまま支えられながら、美羽の体を安定させてくれる。

「危なかった……びっくりしただろ。でも、美羽さんが倒れる前に支えられて良かった」

「……っ」

(やめて……そんな言い方……距離置こうと決めたのに……)

 胸の鼓動は早くなるばかり。

 なのに磯崎は、まるで何事もなかったかのように優しく微笑んだ。

「リビングまで運ぶよ」

「だ、大丈夫ですから、かんばって歩きます……!」

「はいはい、がんばらなくていいから」

 そう言って、ひょいと抱き上げられた。

(……また、抱っこ!?)

 美羽は顔から火が出そうなまま、再び磯崎の腕の中に収まったのだった。
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