これはもはや事故です!
「でも……でも……私のせいで、誰かの人生を壊すなんて……」

 口にした途端、胸がじんと痛んだ。
 磯崎はすぐに首を横に振る。

「美羽さんのせいじゃない。あれは一方的な暴力だ」

「……でも……」

「大げさになりすぎるのが怖い、ってこと?」

 図星すぎて、美羽は黙ってしまう。

 磯崎はそこで一度だけ息を吸い、静かに、決意のこもった声で言う。

「……わかった。無理に警察へ行かなくていい」

「……え?」

「美羽さんが嫌なら、代わりに、俺が動く」

 その言葉に、美羽は思わず顔を上げる。

「俺が話をつける。向こうには接近禁止ときちんとした償いを求める。全部……俺がやるから」

 磯崎は、ゆっくりと近づき、美羽の目線の高さに合わせてしゃがんだ。

「美羽さんは、信じて待っていてくれ」

 ただ、それだけを伝える。
 けれどその声は、自分の全てを預けたくなるような、確かな強さだった。

 美羽は胸が熱くなり、言葉がうまく出ない。

「俺を信じられない?」

「……信じられます」

 小さな声で答えると、磯崎はほっと息をつき、優しく微笑んだ。

「じゃあ、任せて」

 その笑顔が、昨日の不安と恐怖を少しずつ溶かしていくようだった。
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