これはもはや事故です!

おかえりなさい

 玄関の電子ロックが「ピッ」と鳴った。

(……っ、磯崎さん。帰ってきた……!)

 心臓が、無条件に跳ねる。

 車いすに座ったままで美羽が振り返る。すると、スーツ姿の磯崎が入ってきた。

 ネクタイを少し緩めていて、ラフな感じ。
 それなのに嫌になるくらい絵になる。

「ただいま、美羽さん」

 その声が、美羽の心へまっすぐに落ちた。

 思わず返事をしそうになった美羽だった。けれど、真美がから聞いた「あの人、遊び散らかしてるってウワサなんだよ」という言葉が頭の中でグルグルとリピートされる。

(……だめ。距離、置くって……決めたばっかり……)

 美羽は、自分でもわかるほどぎこちなく会釈した。

「……お、おかえりなさい」

「ん?どうした?」

 磯崎がスーツの上着を脱ぎながら近づいてくる。
 ハンガーに掛ける仕草さえ自然で、リビングに入ると美羽の前に膝をつき、視線を合わせてきた。

「足、痛くなかったか?氷、ちゃんと交換した?」

「あ……はい。えっと……大丈夫です」

「本当に?」

 足元にそっと触れようとした磯崎の指先を避けるように、思わず美羽は引っ込めてしまった。

「っ! だ、大丈夫ですから!」

 瞬間、磯崎の手が止まる。
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