これはもはや事故です!
 磯崎は諦めたように細く息を吐き出した。

「わかった。じゃあ、車で送る。荷物も俺が運ぶ。……いいな?」

「えっ……でも……」

「頼む、送らせてくれ。君を一人で帰らせることだけは、できない」

 低く落ち着いた声が、やけに胸に響く。

(優しい。優しすぎる。
 だから、だめなんだよ……
 こんなふうにされたら、また勘違いしてしまう)

 美羽は逃げるように、小さく頷いた。

「……わかりました」

 そう答えながらも、どうしても視線を合わせられなかった。

(磯崎さんを遠ざけなきゃいけないのに……。
 離れたくない、なんて思ってしまう自分が……怖い)

 胸の中がぐちゃぐちゃになって、美羽は立ち上がると、まだ痛みの残る足をかばいながら寝室へ向かう。

 ドアを閉める、その一瞬。
 磯崎が自分を見ていることに、美羽は気づいた。

 その視線が、痛いほど優しくて……。
 思わず逃げるように、扉を閉めてしまった。

 部屋に一人になると、深く息を吐く。

(……だめ。この優しさに、依存しちゃだめ)

 胸に手を当てると、早鐘のような鼓動が、いつまでも止まらなかった。
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