これはもはや事故です!
助手席に残った、美羽の微かな香りが、じわりと胸を刺す。

「……はぁ……」

 誰に聞かせるでもなく、ため息が漏れた。

(美羽さんは、俺を女にだらしない男だと思ってるんだろうな……)

 そうでなければ、あんなに距離を置くような事をしない。
 その勘違いを解きたいのに、解けばたぶん……彼女はもっと遠くへ行くだけだ。

「どうすれば……守れるんだよ」

 信号待ちの赤が、やけに長く感じる。

 こんなに近くにいるのに触れようとすれば、壊してしまいそうで彼女の気持ちが分からない。

「……どうしたらいいんだ」

 聞けば逃げられそうで、怖い。
 でも、このまま離れていく方が、もっと怖い。

 青に変わった信号を見つめながら、ハンドルを握る手に力が入る。

「……美羽さんが望む距離で、俺は待つしかないのか」
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