これはもはや事故です!

磯崎さんのマンションに戻りました。

 磯崎のマンション。
 その玄関に入った瞬間、ふっと温かな空気に包まれる。

「……ただいま」

 美羽が、遠慮がちに言うと、磯崎は一瞬驚いたように目を瞬かせてから、静かに答えた。

「おかえり」

 たったそれだけ。
 でも、そのやりとりに、美羽の胸がじんわり温かくなる。

(……ただいま、って言ってもいいんだ)

 家に上がる少しの段差に手間取っていると、磯崎がさりげなく近づく。

「気をつけて」

「……はい」

 そっと気遣ってくれる距離感。
 それが、心地いい。

 部屋に入ると、磯崎はジャケットを脱ぎ、ネクタイを外しながら言った。

「腹、減ってないか?」

「……少し」

 正直に答えると、彼は冷蔵庫を開けて中を覗いた。

「昨日のスープ、まだ残ってるな」

「……私、温めます」

 言ってから、はっとする。
 出しゃばったかな、と思った瞬間、磯崎がふわりと微笑む。

「まだ。足が痛むだろ。美羽さんは座ってて」
 
「……でも、少し良くなったのに、何もしてないのは、落ち着かなくて……」

 小さく呟くと、磯崎はスープの鍋を手に取りながら、ちらりと美羽の様子を窺う。

「じゃあ、……そこに座って、味見係な」

「……え?」

「責任重大だからな!まずかったら、文句を言っていい」

 冗談めかした口調。
 でも、その裏にあるのは「動かなくていい」という、変わらない配慮だった。

「ふふっ、任せてください。味にはうるさいですから」

「お、頼もしいな」
 
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