夫のいない間に
 「梨子(りこ)ちゃん。グイグイいくねー」
 「はい、飲めるだけ飲みたいんで」
 「吉岡さん。梨子っていうんですね」
 「え、知らなかったの?」

 夫の実家近くのバーであるため、ここには男連れでは来たことはなかった。
 マスターは私が既婚であることは知ってるけれど、井戸端さんとの関係は聞いてこない。

 「吉岡さん、何かあったんですか?」

 アレキサンダーの後にカルアミルクを注文する井戸端さんも、少しホロ酔いなのか顔が赤くなっていた。

 「何もない、ないけど……」

 「……けど?」

  話すつもりは無かったのに、スルッと口から出てしまった。

 「夫が家を出たの」

  井戸端さんが驚いた。

 「え? いつ? 離婚したんですか?」

 離婚という言葉に、多少なり顔をひきつらせる私がいた。



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